4章 バタフリーと密猟団
「……ゲームじゃ、僕の方が勝ってたのに」
ぼそぼそと呟く。ゲームのバトルでは、姉に負けた事があるのは、一、二回くらいだ。友達とバトルしたときは勝っていたらしいが、なぜか姉は急に勝てなくなった。
そして、自分とのバトルも。姉に出来るのだから、簡単にバトルに溶け込めると高をくくっていた。
でも、そうか。姉が勝てなくなったのは、この世界の記憶をなくしたからだ。あのエーフィと一緒に切磋琢磨していた時間を忘れてしまったから、勝たなくなったんだ。
納得はしつつ、タカナオはそれでも自分の出来なさに項垂れた。
「お前……、意外に負けず嫌いなんだな」
そんな事をぼーっとしていると、リョウスケが隣に座って来た。彼は、タカナオと目が合うとニッと笑う。
「意外は余計だよ」
意外と言われ、ムッとした表情でリョウスケを見る。
「……エーフィは、今までいくつもバトルを積んできたんだ。お前よりバトルを知ってて当たり前だろ?」
リョウスケは、いつの間にか真面目な表情だった。タカナオは少し戸惑う。
「でもさ……」
「エーフィは、お前にバトルを教えたいんだよ」
リョウスケの言葉に、「えっ?」とタカナオは聞き返した。果たして自分にバトルを教えたいと思うのだろうか。エーフィは、姉のポケモンである。ゲームでもそうだが、トレーナーのレベルがある程度高くなければ、他の人からもらったポケモンや交換したポケモンは、言うことを聞いてくれない。ゲームに限らず、現実でもあるということをタカナオは何となくわかっているのである。
「わかってないな」
聞き返した彼に、リョウスケはため息混じりに言った。
「エーフィは、自分勝手にバトルをしてたわけじゃないだろ?」
たしかに、エーフィはタカナオの指示が正しいと思えば、しっかり言うことを聞いていた。
「お前に少しでも早く、強くなって欲しいんだよ。これからの戦いを考えてな」
「これからの……戦い?」
「お前、この旅の目的忘れたか?」
「お姉ちゃんを探すこと……」
「違う」
リョウスケはタカナオの言葉に呆れた表情でため息をついた。
「組織から逃げることだろ……。その次が、ミズカさん探しだ」
そう言われ、「あっ」と声をもらした。ここ最近、平和過ぎて、自分が追われていることを忘れていた。
「いいか? そろそろ、敵に遭遇してもおかしくない」
「でも、気配も何も……」
「馬鹿か、お前は! 油断大敵って言葉があるだろ」
タカナオにとって一番必要な言葉かもしれない。彼は、ハッとした表情を浮かべる。いつも呑気なリョウスケに言われたせいか、鼓動が波打った。
「今、お前がやらなきゃならないのはバトルで強くなること。エーフィは、色んなバトルを経験してるからわかってんだ」
「そっか……」
エーフィは一体、今までどんなバトルをしてきたのだろうか。タカナオは、ゼニガメのモンスターボールとエーフィのモンスターボールを取り出した。前と同じだ。エーフィのボールの方が遥かに重く感じられる。
「そんな顔すんなよ。誰でも、すぐに強くなんてなれねぇんだ。俺が言いたいのは、今、出来ることをやって、できる範囲で強くなれってことだ。今すぐ俺やヒナみたいになれなんて言ってねぇよ」
「でもさ……」
「少しでも大きく一歩進みたいなら、もっとポケモンの気持ちを考えろ。そしたら、お前もゼニガメと一緒に強くなれるさ」
リョウスケは立ち上がった。彼の見ている方向にはヒナがいる。彼女を見ると、二人に微笑みかけていた。タカナオも思わず笑う。強くなる方法もポケモンという生き物を理解することも難しい。少しずつで良い。
タカナオは、リョウスケとヒナが一緒の旅仲間で良かったと思った。
ぼそぼそと呟く。ゲームのバトルでは、姉に負けた事があるのは、一、二回くらいだ。友達とバトルしたときは勝っていたらしいが、なぜか姉は急に勝てなくなった。
そして、自分とのバトルも。姉に出来るのだから、簡単にバトルに溶け込めると高をくくっていた。
でも、そうか。姉が勝てなくなったのは、この世界の記憶をなくしたからだ。あのエーフィと一緒に切磋琢磨していた時間を忘れてしまったから、勝たなくなったんだ。
納得はしつつ、タカナオはそれでも自分の出来なさに項垂れた。
「お前……、意外に負けず嫌いなんだな」
そんな事をぼーっとしていると、リョウスケが隣に座って来た。彼は、タカナオと目が合うとニッと笑う。
「意外は余計だよ」
意外と言われ、ムッとした表情でリョウスケを見る。
「……エーフィは、今までいくつもバトルを積んできたんだ。お前よりバトルを知ってて当たり前だろ?」
リョウスケは、いつの間にか真面目な表情だった。タカナオは少し戸惑う。
「でもさ……」
「エーフィは、お前にバトルを教えたいんだよ」
リョウスケの言葉に、「えっ?」とタカナオは聞き返した。果たして自分にバトルを教えたいと思うのだろうか。エーフィは、姉のポケモンである。ゲームでもそうだが、トレーナーのレベルがある程度高くなければ、他の人からもらったポケモンや交換したポケモンは、言うことを聞いてくれない。ゲームに限らず、現実でもあるということをタカナオは何となくわかっているのである。
「わかってないな」
聞き返した彼に、リョウスケはため息混じりに言った。
「エーフィは、自分勝手にバトルをしてたわけじゃないだろ?」
たしかに、エーフィはタカナオの指示が正しいと思えば、しっかり言うことを聞いていた。
「お前に少しでも早く、強くなって欲しいんだよ。これからの戦いを考えてな」
「これからの……戦い?」
「お前、この旅の目的忘れたか?」
「お姉ちゃんを探すこと……」
「違う」
リョウスケはタカナオの言葉に呆れた表情でため息をついた。
「組織から逃げることだろ……。その次が、ミズカさん探しだ」
そう言われ、「あっ」と声をもらした。ここ最近、平和過ぎて、自分が追われていることを忘れていた。
「いいか? そろそろ、敵に遭遇してもおかしくない」
「でも、気配も何も……」
「馬鹿か、お前は! 油断大敵って言葉があるだろ」
タカナオにとって一番必要な言葉かもしれない。彼は、ハッとした表情を浮かべる。いつも呑気なリョウスケに言われたせいか、鼓動が波打った。
「今、お前がやらなきゃならないのはバトルで強くなること。エーフィは、色んなバトルを経験してるからわかってんだ」
「そっか……」
エーフィは一体、今までどんなバトルをしてきたのだろうか。タカナオは、ゼニガメのモンスターボールとエーフィのモンスターボールを取り出した。前と同じだ。エーフィのボールの方が遥かに重く感じられる。
「そんな顔すんなよ。誰でも、すぐに強くなんてなれねぇんだ。俺が言いたいのは、今、出来ることをやって、できる範囲で強くなれってことだ。今すぐ俺やヒナみたいになれなんて言ってねぇよ」
「でもさ……」
「少しでも大きく一歩進みたいなら、もっとポケモンの気持ちを考えろ。そしたら、お前もゼニガメと一緒に強くなれるさ」
リョウスケは立ち上がった。彼の見ている方向にはヒナがいる。彼女を見ると、二人に微笑みかけていた。タカナオも思わず笑う。強くなる方法もポケモンという生き物を理解することも難しい。少しずつで良い。
タカナオは、リョウスケとヒナが一緒の旅仲間で良かったと思った。