4章 バタフリーと密猟団

「ゼニガメ、水鉄砲だ!」

ゼニガメは頷くと、水鉄砲をピジョンに向けて発射する。しかし、ピジョンはあっさりと躱してきた。

「ピジョン、電光石火!」

隙をついて、ピジョンがゼニガメに電光石火を仕掛ける。ゼニガメは宙に吹っ飛んだ。

「翼で打つ!」

宙に浮いたことを良いことに少年は次々に技の指示を出す。

「馬鹿! 次の指示を出せ!!」

リョウスケの助言にタカナオはハッとした。見ているだけではダメだ。そう思っている間に、ゼニガメは攻撃されて地面に叩きつけられた。レベルの差は圧倒的で、地面についたゼニガメは既に立っているのも辛そうな状態だ。

「ピジョン、相手はフラフラだ! そのまま電光石火で決めろ!」

ピジョンは急降下し、ゼニガメに近づく。じっと、ピジョンの動きを見て指示を出すことを堪える。そしてピジョンがあと少しのところでゼニガメに近づいたと同時に、

「水鉄砲!!」

と、叫んだ。その声に反応し、ゼニガメは間一髪のところでピジョンに水鉄砲を放った。しかしピジョンは、負けじと水鉄砲に突っ込み、結果的にゼニガメが力尽きた。

「ごめん、ゼニガメ。戻ってて」

タカナオはゼニガメをモンスターボールに戻すと、エーフィを出した。

「……エーフィ!?」

タカナオが新人トレーナーだと聞いていた少年は驚いた表情を浮かべた。まず新人トレーナーがイーブイの進化系を持っていることはない。

「……まずいわね」
「あれでついていけなかったんだ。エーフィのスピードについていくのは無理だな」

ヒナの心配した表情を見ながら、リョウスケは腕を組み言った。エーフィは元々ミズカのポケモンだ。そして、何より普通のポケモンよりスピードが速いことをサトシ達から聞いていた。ミズカのエースポケモン。今はともかく昔はサトシのピカチュウと互角だったとも聞く。

「まあ、いいさ。新人トレーナーが持ってるポケモンだ。そこまで強くないだろう」

少年はブツブツ言うと、ピジョンに空へ上がるよう指示を出した。やはり空中戦にしたいらしい。

「また空中戦……」
「ピジョン、電光石火!」
「あ……」
「フィ!」

ボーッとしているタカナオに指示を出せと言いたいのかエーフィが叫んだ。

「エーフィ、アイアンテール!」

スピードが速いせいか、エーフィはすんなりとピジョンにアイアンテールを喰らわせる。そして、一気に戦闘不能にさせてしまった。タカナオは驚く。エーフィは、一撃でピジョンを戦闘不能に出来るという自信があり、指示を出すように言ったのだ。普通のバトルではありえない。ポケモンがトレーナーに指示をしている。

「お前……、なんでこんな強いポケモンを……?」

少年はまたも驚いた表情を浮かべていた。しかし、今はバトル中だ。少年は気持ちを落ち着かせながら、次のポケモンを出した。
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