3章 旅立ちの朝

「あの……、なんでお姉ちゃんが?」
「僕にもそこまではわからない」

タカナオの変な質問に、シゲルはそう答えた。タカナオは自分の質問には無理があったと苦笑する。

「そろそろ朝食の時間じゃないのかい?」
「あ……、そうだ。忘れてた」
「戻ろうか」

朝食の事をすっかり忘れていたタカナオにシゲルが言うと、彼は頷いた。

「遅い! トイレじゃなかったの?!」

客室に入ると、目の前には仁王立ちして機嫌の悪いヒナがいた。機嫌が悪い理由は想像がつく。きっとリョウスケに両親のことをちゃんと話してもえなかったのが原因だ。リョウスケがヒナの後ろで申し訳なさそうにタカナオを拝んでいる。

説明しても聞いてもらえそうにない。タカナオはため息をついた。

「困惑しているじゃないか。僕が彼にミズカの追われている理由を話していたんだ」

そう言われ、ヒナはムッとした表情をつくりながらも、もうそれ以上は言わなくなった。

「すまなかったね」
「いや、僕の方こそ……」

小声でシゲルが言うと、タカナオは苦笑した。そして、二人はまたヒナがキレないように席に座る。すでにオムライスが並べてあった。

いただきますの挨拶と共に、オムライスを口に入れる。カスミの言った通り、オムライスはミズカが作った時の味に似ていた。彼は、姉の料理が好きだ。そのため、朝からオムライスでも完食する事が出来た。

「タカナオ」

朝食を食べ終わると、オーキド博士に呼ばれた。

「リョウスケやヒナにも聞いて欲しいんじゃが、ミズカはまだ、昔来たときの記憶を思い出せておらんかもしれんのじゃ」

タカナオは小首を傾げた。サトシやシゲル、カスミはミズカのことを全て思い出している。それにミズカはさっき北風使いだと言っていた。彼らの記憶が戻っていないとは思えない。

「記憶が戻ってれば、ここへ来てもおかしくないからな」
「ミズカの事だから突っ走ってる可能性もあるけど……」
「僕達に心配をかけたくないなら来るはずだよ。タカナオがいれば尚更」

サトシ、カスミ、シゲルの言葉にタカナオはよく姉の性格をわかっていると思う。

「ま、来ないなら、探すだけですよ。な、タカナオ」
「う、うん」

リョウスケにいきなり振られて焦るが、彼の言う通りだと思い頷いた。そして、タカナオは立ち上がる。

「僕達、そろそろ旅立ちます」

リョウスケとヒナも立ち上がった。姉の記憶が戻っていないなら余計に探した方が良い。そして早く見つけなくてはと思ったのだ。

「そうか。準備してくると良いじゃろう」

オーキド博士が言うと、三人は頷いて荷物を持ってきた。そして、玄関に行く。

「それじゃあ、行って来ます」
「気をつけるんじゃぞ」
「はい!」

こうして、タカナオ、リョウスケ、ヒナの三人は、旅立った。
15/18ページ
スキ