3章 旅立ちの朝
「シャイル様」
「ん? なんだ」
荷物を整理しているシャイルにマルナが話しかけた。シャイルは、手を止め彼女を見る。
「リョウスケ……、よくあんな危ない賭けをしましたね」
「あぁ。俺も味方同士をあてるのはどうかと思ったんだがな。なんせ、安全にタカナオをこちらの世界に連れて来られるが、逆に俺らもその場で裏切り者だとバレる恐れがあった」
ため息混じりにシャイルは言った。裏切り者同士……、味方同士ならば、打ち合わせさえすれば、簡単にタカナオを連れて来られる。
「事の発端はボス命令だがな」
シャイルは肩を竦める。ボスの命令は絶対。マルナにタカナオを連れてこさせようとしてきたのが始まりだった。こちらには世界的権威が持つという時空間装置の手鏡もない。タカナオを連れてくるにしても、適当な時空間を通らせては北風使いと同じになる。
そこで、味方同士でぶつかってしまえばいいと言ったのがリョウスケだった。失敗すれば、どちらも裏切り者だとバレてしまう可能性があり、シャイルは最初反対した。
結果的に押し切られてリョウスケに囮になってもらったのだが。そうリョウスケが相手にしたリングマのトレーナーこそマルナだった。今はドレスではないが、北風使いの弟がどうやったら敵と味方を見分けられるかの話になったとき、胡散臭い方を敵だと思うだろうと、わざわざドレスで行かせた。
「だが、結果的に上手くいってくれたんだ。良かった」
「はい」
シャイルの言葉にマルナはニコッと笑い頷いた。
「後は、鍵を探すだけですね」
マルナがガッツポーズを見せると、シャイルは、ははっと笑うが、マフラーがずれ落ちそうになり、マフラーを鼻までかける。
「シャイル、入るぞ」
部屋に入って来たのは、幹部の一人、ジンだった。アジトの中は広くなっており、寮みたいな感じだ。一人一人に部屋を与えられ、任務があれば誰かが部屋に寄ってくる。そして会議となれば、力のある者が呼ばれる。
「会議か?」
「いや」
会議だと思い聞いたシャイルに、ジンは首を横に振り、メモを渡した。
「カルナ様より命令だ」
カルナは組織の首領だ。ジンをチラリと見る。ジンはシャイルのまとめている荷物を見て、小さく息を吐いた。
シャイルは顔を隠しているが、ジンから目を逸らす。メモを見る。
「わかった」
シャイルがメモの内容に了承した。ジンは何か言いたげにしたが、シャイルが取り合わないことを悟り、部屋を出て行った。
ジンがちゃんと去ったを確認すると気が抜けたように、シャイルは椅子に座った。荷物を見られて何か言われるかと思ったが、何も言われずにホッとした。
「北風使いか……」
呟くシャイルを横目にマルナは時計を見る。針はすでに12をさしていた。
「なんと書いてありました?」
マルナが聞く。シャイルはチラッと彼女を見た。
「外へ出るな。と書いてあった」
と、メモを渡す。「え……」とマルナはメモを見つめた。カルナに自分たちの考えが読まれている。しかし、シャイルはしれっとしていた。
「ん? なんだ」
荷物を整理しているシャイルにマルナが話しかけた。シャイルは、手を止め彼女を見る。
「リョウスケ……、よくあんな危ない賭けをしましたね」
「あぁ。俺も味方同士をあてるのはどうかと思ったんだがな。なんせ、安全にタカナオをこちらの世界に連れて来られるが、逆に俺らもその場で裏切り者だとバレる恐れがあった」
ため息混じりにシャイルは言った。裏切り者同士……、味方同士ならば、打ち合わせさえすれば、簡単にタカナオを連れて来られる。
「事の発端はボス命令だがな」
シャイルは肩を竦める。ボスの命令は絶対。マルナにタカナオを連れてこさせようとしてきたのが始まりだった。こちらには世界的権威が持つという時空間装置の手鏡もない。タカナオを連れてくるにしても、適当な時空間を通らせては北風使いと同じになる。
そこで、味方同士でぶつかってしまえばいいと言ったのがリョウスケだった。失敗すれば、どちらも裏切り者だとバレてしまう可能性があり、シャイルは最初反対した。
結果的に押し切られてリョウスケに囮になってもらったのだが。そうリョウスケが相手にしたリングマのトレーナーこそマルナだった。今はドレスではないが、北風使いの弟がどうやったら敵と味方を見分けられるかの話になったとき、胡散臭い方を敵だと思うだろうと、わざわざドレスで行かせた。
「だが、結果的に上手くいってくれたんだ。良かった」
「はい」
シャイルの言葉にマルナはニコッと笑い頷いた。
「後は、鍵を探すだけですね」
マルナがガッツポーズを見せると、シャイルは、ははっと笑うが、マフラーがずれ落ちそうになり、マフラーを鼻までかける。
「シャイル、入るぞ」
部屋に入って来たのは、幹部の一人、ジンだった。アジトの中は広くなっており、寮みたいな感じだ。一人一人に部屋を与えられ、任務があれば誰かが部屋に寄ってくる。そして会議となれば、力のある者が呼ばれる。
「会議か?」
「いや」
会議だと思い聞いたシャイルに、ジンは首を横に振り、メモを渡した。
「カルナ様より命令だ」
カルナは組織の首領だ。ジンをチラリと見る。ジンはシャイルのまとめている荷物を見て、小さく息を吐いた。
シャイルは顔を隠しているが、ジンから目を逸らす。メモを見る。
「わかった」
シャイルがメモの内容に了承した。ジンは何か言いたげにしたが、シャイルが取り合わないことを悟り、部屋を出て行った。
ジンがちゃんと去ったを確認すると気が抜けたように、シャイルは椅子に座った。荷物を見られて何か言われるかと思ったが、何も言われずにホッとした。
「北風使いか……」
呟くシャイルを横目にマルナは時計を見る。針はすでに12をさしていた。
「なんと書いてありました?」
マルナが聞く。シャイルはチラッと彼女を見た。
「外へ出るな。と書いてあった」
と、メモを渡す。「え……」とマルナはメモを見つめた。カルナに自分たちの考えが読まれている。しかし、シャイルはしれっとしていた。