1章 北風使いの生まれ変わり
「お前、水タイプ使いやめたのか?」
「……やっぱり」
カスミはため息をつく。ピカチュウがカスミの胸に飛び込んだ。
「やっぱりって?」
「ミズカのこと、思い出してないのよね?」
「ミズカ? 誰だそれ」
サトシは首を傾げる。ピカチュウが「ピピカ」と答える。ピピカは人の名前だったらしい。サトシは眉間にシワを寄せる。
「この子かい?」
シゲルが写真を見せると、カスミは頷いた。
「8年前にあたし達と一緒に旅をしていた女の子よ」
「……いや、まったく覚えがないんだけど」
「そりゃあね。あたしも最近までミズカの記憶を失っていたもの。この子もミズカのポケモンよ。おそらく研究所にいても2人とも思い出してくれそうになかったんじゃないかしら? あたしのところに来たのよ」
説明されても頭が追いつかない。しかし、シゲルはエーフィには心当たりがあるようだった。
「確かに、エーフィは最近まで研究所にいたね。いなくなったと思ったら、カスミのところだったのか」
「ミズカが危ないの。だから、早いところ二人に思い出してもらおうと思って」
「なんで俺たち?」
「タケシも思い出してるわ。ハルカとヒカリに連絡取ってもらったら、二人も思い出しているみたい。あと、マサトも」
「……ち、ちょっと待ってくれ。俺、そのミズカって奴と長い間旅してたのか?」
困惑するサトシにカスミは頷いた。サトシが不思議に思ったのも無理はない。カスミは最初の仲間だ。ということは、早くてカントー地方から一緒に旅をしていたことになる。
「ミズカは違う世界の子だから、自分の住む世界と往復して来ていたけどね。とにかく、サトシもシゲルも思い出すべきなのよ!」
サトシとシゲルは顔を見合わせる。
とりあえず、自分たちは一人の少女の記憶がなくなっていることがわかった。信じ難いが、写真がその証拠だ。カスミは普段ジムリーダーをしていて、簡単にジムを空けられないのに、わざわざマサラタウンまで飛んできた。
「とりあえず行くわよ」
「どこへ?」
「オーキド研究所!」
カスミは二人が返事をしないうちにスタスタと歩いていった。慌ててサトシ達も追いかける。
「整理をさせてもらっても?」
「良いわよ」
「僕らは記憶を消されたってことかい?」
「消されたとは少し違うわ。ミズカはこっちの世界にある事情でオーキド博士に呼ばれていたの。それが解決したんだけど、世界を往復するとそれだけで時空間が歪むらしくて、ミズカはどちらの世界に住むのか選択を迫られたのよ」
「つまり、彼女は向こうの世界を選んだわけだね。それと記憶を失うにはどう関係が?」
「住む世界を選んでも記憶があったら、世界が繋がりやすくなって、結局は時空間が歪むみたいな話だったと思う」
サトシは二人の異次元の会話に、ずっと顔をしかめていた。何を言っているのかわからない。時空間といえば、時空の狭間だ。サトシは何度か入ったことがある。つまり、その先に、そのミズカの住む世界があるということなのだろうか。そこまでは想像できず、首を傾げる。
「なるほどね。記憶を消すしかなかったのか」
腕を組む。シゲルには伝わっている。すげぇな、とサトシは思った。
「……やっぱり」
カスミはため息をつく。ピカチュウがカスミの胸に飛び込んだ。
「やっぱりって?」
「ミズカのこと、思い出してないのよね?」
「ミズカ? 誰だそれ」
サトシは首を傾げる。ピカチュウが「ピピカ」と答える。ピピカは人の名前だったらしい。サトシは眉間にシワを寄せる。
「この子かい?」
シゲルが写真を見せると、カスミは頷いた。
「8年前にあたし達と一緒に旅をしていた女の子よ」
「……いや、まったく覚えがないんだけど」
「そりゃあね。あたしも最近までミズカの記憶を失っていたもの。この子もミズカのポケモンよ。おそらく研究所にいても2人とも思い出してくれそうになかったんじゃないかしら? あたしのところに来たのよ」
説明されても頭が追いつかない。しかし、シゲルはエーフィには心当たりがあるようだった。
「確かに、エーフィは最近まで研究所にいたね。いなくなったと思ったら、カスミのところだったのか」
「ミズカが危ないの。だから、早いところ二人に思い出してもらおうと思って」
「なんで俺たち?」
「タケシも思い出してるわ。ハルカとヒカリに連絡取ってもらったら、二人も思い出しているみたい。あと、マサトも」
「……ち、ちょっと待ってくれ。俺、そのミズカって奴と長い間旅してたのか?」
困惑するサトシにカスミは頷いた。サトシが不思議に思ったのも無理はない。カスミは最初の仲間だ。ということは、早くてカントー地方から一緒に旅をしていたことになる。
「ミズカは違う世界の子だから、自分の住む世界と往復して来ていたけどね。とにかく、サトシもシゲルも思い出すべきなのよ!」
サトシとシゲルは顔を見合わせる。
とりあえず、自分たちは一人の少女の記憶がなくなっていることがわかった。信じ難いが、写真がその証拠だ。カスミは普段ジムリーダーをしていて、簡単にジムを空けられないのに、わざわざマサラタウンまで飛んできた。
「とりあえず行くわよ」
「どこへ?」
「オーキド研究所!」
カスミは二人が返事をしないうちにスタスタと歩いていった。慌ててサトシ達も追いかける。
「整理をさせてもらっても?」
「良いわよ」
「僕らは記憶を消されたってことかい?」
「消されたとは少し違うわ。ミズカはこっちの世界にある事情でオーキド博士に呼ばれていたの。それが解決したんだけど、世界を往復するとそれだけで時空間が歪むらしくて、ミズカはどちらの世界に住むのか選択を迫られたのよ」
「つまり、彼女は向こうの世界を選んだわけだね。それと記憶を失うにはどう関係が?」
「住む世界を選んでも記憶があったら、世界が繋がりやすくなって、結局は時空間が歪むみたいな話だったと思う」
サトシは二人の異次元の会話に、ずっと顔をしかめていた。何を言っているのかわからない。時空間といえば、時空の狭間だ。サトシは何度か入ったことがある。つまり、その先に、そのミズカの住む世界があるということなのだろうか。そこまでは想像できず、首を傾げる。
「なるほどね。記憶を消すしかなかったのか」
腕を組む。シゲルには伝わっている。すげぇな、とサトシは思った。