3章 旅立ちの朝

夜になって、

「……かなり疲れてたみたいだな」

サトシは小声で言った。彼の見ているそこには、気持ちの良さそうな寝息を立てているタカナオがいた。布団の中に入っていてすっかり休息中である。サトシは少し残念そうな表情を浮かべた。

「ミズカのこと、聞きたかったのかい?」
「あぁ」
「あたしも聞きたかったわ。ミズカがもとの世界でどうだったか」

シゲルとサトシの話に、カスミも入って来た。彼らは、不登校になった後のミズカを知らない。いや、少しずつ学校に通い始めていたのは知っているが、その頃に彼女とは逢えなくなった。

「皆さん、どうしたんですか?」
「なんか、考えてるみたいですね」

そこへ、欠伸をしたリョウスケとヒナが来た。二人とも、もう寝るつもりらしく、ジャージ姿である。

「まあ、色々とな」

サトシが少し困った表情で笑った。リョウスケは寝ているタカナオを見る。

「そういえば、こいつ、ミズカさんが追われている理由……知りませんよね?」

リョウスケが言うと、後の4人は「あっ」と声をもらした。他の仲間たちに連絡を取ってバタバタしていて、すっかり説明するのを忘れていたのだ。

「まあ、なんとかなるわよ」
「そうですよね……。聞かれたら、あたし達が説明すれば良いですもんね」

珍しくカスミがサトシみたいなことを言うと、ヒナが諦めたように言う。カスミは苦笑した。

「明日は早い。君達も寝た方が良いよ」

シゲルに言われ、リョウスケとヒナを頷いた。明日から、また旅を始める。彼の言った通り、寝た方が良いだろう。二人は、サトシ達に「おやすみなさい」と挨拶して布団に入った。

「俺達も寝ようぜ」

サトシ達も明日に備え、眠りについた。
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