「言ったら余計混乱する。リョウスケとヒナも知らないしな。知らなくて良い事実の一つだろ」
「ミズカと再会するまで、バレなきゃ良いわね」

カスミがそう言うと、サトシは「そうだな」と呟き、ポケットから一枚の写真を出した。シゲルに返そうとしたら、持っていてくれと言われた写真。

もし記憶のないまま、ミズカが自分と異母兄妹だと聞いたらどう思うのだろうか。それはタカナオにも同じことが言える。それに自分はミズカのことはよく知っていても、タカナオのことはよく知らない。ミズカと会話していて、たまに出てくるくらいだった。

サトシは少し眉間にシワを寄せると、すぐに写真をしまった。

「あー！！」

いきなりリョウスケが声を張り上げた。リョウスケが焦ったようにポケギアを持っている。

「どうしたのよ？」

ヒナが聞く。

「母さんに、また旅に出るって連絡すんの忘れてた。ちょっくら、連絡してくる」

そう言って、リョウスケは風のように部屋を出て行った。サトシは苦笑した。リョウスケは呑気なことが多いからか、たまにやらなきゃいけないことを忘れていることがある。だからか、誰も変には思わなかった。