3章 旅立ちの朝
「裏切りが出たな」
「はい。我々の怖さを知らないのですかね。いくらリーグの優勝経験があると言ってもまだ十四歳のガキじゃないですか」
ミズカを追っている組織には事件が起きていた。
「始末しろ。我々の恐ろしさをわからせなければな」
どうやら、一人裏切り者が出たらしい。組織の幹部達は口を揃えて、始末しろという。そんな中、二人ほど少し落ち着きない者がいた。
「どうするんですか、シャイル様」
綺麗な金髪のツインテールに黒いワンピースの少女が、隣の黒いコートに白いマフラーで口を覆い、黒いハンチング帽を被った者に話しかけた。隠していて顔が見えないため、男女の区別がつかない。シャイルと言うらしい。
「今考えている」
シャイルは腕を組み、じっと何かを考えている素振りをする。
「シャイル、お前はどう思う。お前と一緒に行動していることが多かっただろう?」
幹部の一人、リンクに聞かれる。ここには、自分と隣にいる
マルナ以外は全員幹部以上だ。なぜシャイルが呼ばれているかというと、もちろん裏切り者と一緒に行動をしていたこともあるのだが、組織の中で幹部よりもバトルが強いことも挙げられる。
組織にとって、シャイルは掴めない存在。だから、様子を窺っている。
シャイルは、チャンスと思って席を立ち上がった。幹部を一通り見渡すと、やがて話し始める。
「あいつは、北風使いについて深く知りたいと言っていた。ならば奴は、スイクンやライコウ、エンテイの伝説が残るジョウト地方か、数多くの神話が眠るシンオウ地方に向かっただろうな。俺なら、そうする」
「なら、今追っている北風使いはどうするんだ。奴は、世界の破滅を防ごうとしているんだぞ。もし北風使いがカントーにいれば、奴もカントーに行くだろう」
北風使いとは、ミズカのことである。組織にとってミズカは、ただの北風使いの生まれ変わりではない。すでに現代に生きる北風使いだ。そして、世界の破滅を目的とするこの組織には必要な存在だった。
ちなみに破滅の鍵の在処は迷信ではあるが北風使いの前世だけが知ると言われている。ようするにミズカがいなければ、何も出来ないのだ。
「北風使いも自分の事を調べたいはずだ。自ずと、ジョウトやシンオウに行くはずだが?」
シャイルの言葉に幹部達は黙った。確かにシャイルの言っていることは正論だと思ったのだ。
「それにもし北風使いが鍵の在りかを知らないのだとしたら、やはりジョウトかシンオウだと思うがな」
シャイルは「以上」と言い、勝手に会議室を後にした。金髪の少女は幹部にぺこりとすると後をついて行く。
「上手くいきましたね。シャイル様」
小声で、金髪の少女が言った。
「さあな。ただ俺は、一瞬だけカントー地方から遠ざけるようにしただけだ。後は幹部達次第」
同じく小声でシャイルも言った。裏切って出て行った者の行方を、シャイルは知っている。一緒に行動していたのには訳がある。二人も裏切り者の仲間。彼らも世界の破滅を阻止しようとしているのだ。
「あれから連絡はどうだ?」
「まだ来ませんが、作戦は成功していると思います。あちらには、ポケモンの世界的権威にチャンピオンもいるみたいですし」
シャイルの表情は隠れて見えないが、ホッとしたみたいだ。
「マルナ」
シャイルは足を止め、マルナを呼んだ。マルナは「はい」と返事をする。いよいよだ。
「俺達も準備をする」
シャイルの言葉にマルナは口角を上げると頷いた。ここからは、もう止まれない。シャイルは小さく息を吐いた。
「はい。我々の怖さを知らないのですかね。いくらリーグの優勝経験があると言ってもまだ十四歳のガキじゃないですか」
ミズカを追っている組織には事件が起きていた。
「始末しろ。我々の恐ろしさをわからせなければな」
どうやら、一人裏切り者が出たらしい。組織の幹部達は口を揃えて、始末しろという。そんな中、二人ほど少し落ち着きない者がいた。
「どうするんですか、シャイル様」
綺麗な金髪のツインテールに黒いワンピースの少女が、隣の黒いコートに白いマフラーで口を覆い、黒いハンチング帽を被った者に話しかけた。隠していて顔が見えないため、男女の区別がつかない。シャイルと言うらしい。
「今考えている」
シャイルは腕を組み、じっと何かを考えている素振りをする。
「シャイル、お前はどう思う。お前と一緒に行動していることが多かっただろう?」
幹部の一人、リンクに聞かれる。ここには、自分と隣にいる
マルナ以外は全員幹部以上だ。なぜシャイルが呼ばれているかというと、もちろん裏切り者と一緒に行動をしていたこともあるのだが、組織の中で幹部よりもバトルが強いことも挙げられる。
組織にとって、シャイルは掴めない存在。だから、様子を窺っている。
シャイルは、チャンスと思って席を立ち上がった。幹部を一通り見渡すと、やがて話し始める。
「あいつは、北風使いについて深く知りたいと言っていた。ならば奴は、スイクンやライコウ、エンテイの伝説が残るジョウト地方か、数多くの神話が眠るシンオウ地方に向かっただろうな。俺なら、そうする」
「なら、今追っている北風使いはどうするんだ。奴は、世界の破滅を防ごうとしているんだぞ。もし北風使いがカントーにいれば、奴もカントーに行くだろう」
北風使いとは、ミズカのことである。組織にとってミズカは、ただの北風使いの生まれ変わりではない。すでに現代に生きる北風使いだ。そして、世界の破滅を目的とするこの組織には必要な存在だった。
ちなみに破滅の鍵の在処は迷信ではあるが北風使いの前世だけが知ると言われている。ようするにミズカがいなければ、何も出来ないのだ。
「北風使いも自分の事を調べたいはずだ。自ずと、ジョウトやシンオウに行くはずだが?」
シャイルの言葉に幹部達は黙った。確かにシャイルの言っていることは正論だと思ったのだ。
「それにもし北風使いが鍵の在りかを知らないのだとしたら、やはりジョウトかシンオウだと思うがな」
シャイルは「以上」と言い、勝手に会議室を後にした。金髪の少女は幹部にぺこりとすると後をついて行く。
「上手くいきましたね。シャイル様」
小声で、金髪の少女が言った。
「さあな。ただ俺は、一瞬だけカントー地方から遠ざけるようにしただけだ。後は幹部達次第」
同じく小声でシャイルも言った。裏切って出て行った者の行方を、シャイルは知っている。一緒に行動していたのには訳がある。二人も裏切り者の仲間。彼らも世界の破滅を阻止しようとしているのだ。
「あれから連絡はどうだ?」
「まだ来ませんが、作戦は成功していると思います。あちらには、ポケモンの世界的権威にチャンピオンもいるみたいですし」
シャイルの表情は隠れて見えないが、ホッとしたみたいだ。
「マルナ」
シャイルは足を止め、マルナを呼んだ。マルナは「はい」と返事をする。いよいよだ。
「俺達も準備をする」
シャイルの言葉にマルナは口角を上げると頷いた。ここからは、もう止まれない。シャイルは小さく息を吐いた。