このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

2章 姉

『お姉ちゃんなんでそんなに、ポケモンが好きなの?』
『え……っと、好きだから好きなの』

ふいにそんな会話が蘇った。全く言った覚えのない言葉。しかし、たしかにあった会話。

ずっと小さい時の記憶。彼女は自分の質問に答えになっていない答えを放った。けれども、本当に好きなのは伝わっていた。いつもテレビに張り付いてポケモンを観ていた。ゲームでポケモンバトルをすることもよくあった。

そんな姉は、3ヶ月前、突然に姿を消してしまった。

「だから、お姉ちゃんだよ!」
「何言ってんのよ、あんたにお姉ちゃんなんていないでしょ」

その言葉に驚いた。ありえない。母が自分の娘を忘れるわけがない。しかし、妙に胸騒ぎがする。

「……じ、冗談はなしだよ?」
「冗談って、タカナオが冗談言っているじゃない」

おかしい。たしかに母親は冗談をよく言うが、表情でわかる。本気で言っているらしかった。にわかに信じ難いことが起こっている。ドクドクと心臓が脈打つ。

「もういいよ」

携帯を持って、部屋へ戻った。そして、ベッドに寝転がると携帯を開く。携帯が表示している時間は、もう夜の11時を越していた。どうしてもミズカの消息が気になり、携帯のアドレス帳でミズカの携帯番号を探す。

「ミズカ……ミズカ……」

姉の名前を呼びながら、アドレス帳を端から見ていく。しかし、彼女の名前はなかった。

「……お姉ちゃんのメールアドレスも携帯番号も……ない?」

それだけじゃない。名前すらなかった。頭が真っ白になって行く。

「……部屋」

そうだ、姉の部屋だ。もしかしたら、書き置きでもしているかもしない。ベッドからピョンと飛び起きて、少しミズカの部屋に入るのは気が引けたが、勢いよくドアを開けた。……しかし、そこはただの空き部屋と化していた。そのガランとした部屋が、彼女の存在を否定する。

「……お……姉ちゃん……?」

ミズカは、タカナオの中だけの存在となっていることに、やっと理解した。

「……どうして」

何がなんだかわからない。自分の姉が一瞬にして消えてしまった。

タカナオは、家を飛び出した。公園や店、心当たりのあるところは隅から隅まで探した。そして、出会ったのは、前の父親だった。

タカナオの母は一度離婚し、再婚している。今の父親は実の父親ではない。目の前に立っていたのは、実の父親の方であった。

「……なんでお姉ちゃんがいないの?」

そう聞くと、父親は困った表情をした。やはり自分の言っていることはおかしく聞こえるのだろうか。そう思った瞬間、意識を失っていた。

起きたときには、ベッドの上。自分も姉の存在を忘れていた――。

6/9ページ
スキ