1章 北風使いの生まれ変わり
「北風使い?」
重々しい本を持ってきた幼馴染でありライバルでもあるシゲルに、世界チャンピオンのサトシは首を傾げた。
「北風使いについては知っているかい?」
「まったく」
「……ポケモンのことだけじゃなく、ニュースも見ることを奨めるよ」
そんな嫌味を言いながら、シゲルは重々しい本を開いた。タイトルすら難しい字で読めない。サトシは怪訝になる。
「ニュースでなんかあったのか?」
「……北風使いというのは、スイクン伝説に記載された人物だ」
「?」
「北風使いは破滅の鍵という世界を破滅に導く力を持つという。その北風使いの生まれ変わりはもともと違う世界の住民らしいが、今はこの世界にいるというんだ」
「いたらどうなんだよ?」
「世界の破滅の可能性があると。だから、NWGが彼女の消息を追っているらしい。どうやら破滅の力を利用しようという悪の組織もいるようでね。彼女を保護しようとしてるようだ」
NWG……。最近よく聞く慈善事業団体だ。数々の依頼をこなし、周知に認められる団体。最近は依頼をするのに2年は待つという。サトシですら知っている団体だった。
世界の破滅と言われてもいまいち話にピンと来ない。シゲルはスイクン伝説に挟まれた写真を一枚取り出し、サトシに差し出す。そこに写っているのは、小さい女の子と両端にいるシゲルと自分だった。
サトシは目を見開く。見覚えのない写真だ。
「……見覚えはないだろう? 僕もない。ただ、おそらくはこの写真の子が北風使いの生まれ変わりなんだと思う」
「……そんなことあるか?」
「スイクン伝説の間に挟まっていた。オーキド博士は答えてくれない。答えてくれないことが答えなんだと僕は思う」
「……つまり、俺たちが知っている奴だってことか?」
黒髪のカチューシャをした女の子。じっと見つめていると、ピカチュウが横から覗いてきた。そして、目を見開くと、嬉しそうに「ピピカ!」と声を上げた。
「ピカチュウは知ってるのか?」
「ピカピカ」
「いやでも、この写真ってトレーナーになる前だよな?」
「僕もサトシも8歳くらいかと思うよ」
じゃあ、なぜピカチュウが知っているのか。サトシとピカチュウの出会いはサトシが10歳になってからだ。
「なんで――」
何が起こっているかわからない。そう思っていると、家に誰かが来た。開けるとそこにいたのは、サトシの恋人であり、ハナダジムのジムリーダーでもあるカスミだった。その隣には、見知らぬエーフィがいる。
重々しい本を持ってきた幼馴染でありライバルでもあるシゲルに、世界チャンピオンのサトシは首を傾げた。
「北風使いについては知っているかい?」
「まったく」
「……ポケモンのことだけじゃなく、ニュースも見ることを奨めるよ」
そんな嫌味を言いながら、シゲルは重々しい本を開いた。タイトルすら難しい字で読めない。サトシは怪訝になる。
「ニュースでなんかあったのか?」
「……北風使いというのは、スイクン伝説に記載された人物だ」
「?」
「北風使いは破滅の鍵という世界を破滅に導く力を持つという。その北風使いの生まれ変わりはもともと違う世界の住民らしいが、今はこの世界にいるというんだ」
「いたらどうなんだよ?」
「世界の破滅の可能性があると。だから、NWGが彼女の消息を追っているらしい。どうやら破滅の力を利用しようという悪の組織もいるようでね。彼女を保護しようとしてるようだ」
NWG……。最近よく聞く慈善事業団体だ。数々の依頼をこなし、周知に認められる団体。最近は依頼をするのに2年は待つという。サトシですら知っている団体だった。
世界の破滅と言われてもいまいち話にピンと来ない。シゲルはスイクン伝説に挟まれた写真を一枚取り出し、サトシに差し出す。そこに写っているのは、小さい女の子と両端にいるシゲルと自分だった。
サトシは目を見開く。見覚えのない写真だ。
「……見覚えはないだろう? 僕もない。ただ、おそらくはこの写真の子が北風使いの生まれ変わりなんだと思う」
「……そんなことあるか?」
「スイクン伝説の間に挟まっていた。オーキド博士は答えてくれない。答えてくれないことが答えなんだと僕は思う」
「……つまり、俺たちが知っている奴だってことか?」
黒髪のカチューシャをした女の子。じっと見つめていると、ピカチュウが横から覗いてきた。そして、目を見開くと、嬉しそうに「ピピカ!」と声を上げた。
「ピカチュウは知ってるのか?」
「ピカピカ」
「いやでも、この写真ってトレーナーになる前だよな?」
「僕もサトシも8歳くらいかと思うよ」
じゃあ、なぜピカチュウが知っているのか。サトシとピカチュウの出会いはサトシが10歳になってからだ。
「なんで――」
何が起こっているかわからない。そう思っていると、家に誰かが来た。開けるとそこにいたのは、サトシの恋人であり、ハナダジムのジムリーダーでもあるカスミだった。その隣には、見知らぬエーフィがいる。