1章 北風使いの生まれ変わり
「おそらく、組織はミズカを捕まえるために彼女の弟を人質にしようとしているのではないかのう。ミズカの弟も向こうの世界の住民じゃ。当然、ポケモンを持っておらん。奴らに時空間を繋げる手段があるなら人質にしやすい者を捕まえた方が効率がよいからのう」
「なるほど……。直接、そちらにミズカさんから連絡は?」
ジュンサーの言葉にオーキドは首を横に振った。
サトシ達は顔を見合わせる。ミズカの弟まで巻き込まれる事態になっている。サトシは、ミズカのことを考える。逃げている中で弟のことまで守らなきゃならない状況になっている。だから、助けを求めて来たことはわかる。
できれば、直接連絡が欲しかったが、今はそうも言ってられない。ミズカの弟ということは、顔は知らないが自分の弟だということでもある。だったら、やることはまず……。サトシはオーキドの隣に来て、テレビ電話の前に立つ。
「ミズカの弟は俺たちがなんとかします」
「サトシ……」
「時空間がここから繋げられるなら、危険な場合も考えて俺が行った方がいい。ミズカの弟を連れてくる」
「ご協力感謝します。では」
ジュンサーは安心すると、電話を切った。
「……ミズカはどうすんのよ? あんた、さっき自分が一番動けるって言ってたじゃない」
カスミの突っ込みにサトシは顔をしかめる。ミズカを探すことも大事だ。
「いや、だけど……」
「おそらく、ミズカの弟はミズカの記憶がないじゃろう。記憶がないところで説得はかなり難しい。何日か滞在も考えんとじゃぞ」
「記憶がないってどういうことですか?」
サトシが怪訝な表情になった。オーキドは腕を組む。サトシから目を逸らした。
「……流石に言わんとじゃな」
「何かあるんですか?」
カスミも聞く。サトシはシゲルを見る。シゲルもわからないらしく、小さく首を横に振った。やがてオーキドは諦めたように息を吐くと、口を開いた。
「時空間は繋げ方がとても複雑なんじゃよ。行きはよいよい帰りは怖い。行きの道に戻れなければ帰りの道がないということじゃ。ミズカが使っていた手鏡は、鏡の力で通った道を反射させて帰りの道を作っておった。時空間が歪み過ぎなかったのもそのおかげじゃ。じゃが、ミズカは今回、そのルートを通っていない。最悪のケースを考えると、ミズカは向こうに二度と帰れないかもしれん」
3人とも声が出なかった。ミズカは二度とあちらの世界へは帰れないかもしれない。ここまで言うということは、オーキドは確信に近いはずだ。
さらにオーキドは続けた。
「ノリタカが協力しているなら向こうへ帰ったはずじゃ。実際、戻れるなら戻った方が逃げやすいしのう。しかし、時空間の歪みは発生しておらん。つまりは帰り道を掻き消され、あちらの世界での存在を消された可能性があるんじゃ」
「……帰り道は見つからないんですか?」
シゲルが聞くと、オーキドは頷く。
「開きっ放しの時空であれば、戻ることは可能のはずじゃ。そう思って、わしも歪みの場所に行ったが綺麗に時空間は閉じられておった。時空間の扱いを知らない者の手口ではない」
「では、組織はすべてわかっててやったってことですか」
「そうじゃな。ということはじゃ、ミズカの弟も同様の手口で来る」
「……誰かが行くしかないってことですね」
シゲルは腕を組む。ミズカがあちらの世界へ本当に戻れないのかは、まだハッキリとはしていない。だったら、まずはやるべきことをやろうと考えた。
サトシには一番捕まってほしくないミズカを探してほしいのが、シゲルの本心だ。では、他にミズカの弟を連れてくる適任はいるだろうか。
「なるほど……。直接、そちらにミズカさんから連絡は?」
ジュンサーの言葉にオーキドは首を横に振った。
サトシ達は顔を見合わせる。ミズカの弟まで巻き込まれる事態になっている。サトシは、ミズカのことを考える。逃げている中で弟のことまで守らなきゃならない状況になっている。だから、助けを求めて来たことはわかる。
できれば、直接連絡が欲しかったが、今はそうも言ってられない。ミズカの弟ということは、顔は知らないが自分の弟だということでもある。だったら、やることはまず……。サトシはオーキドの隣に来て、テレビ電話の前に立つ。
「ミズカの弟は俺たちがなんとかします」
「サトシ……」
「時空間がここから繋げられるなら、危険な場合も考えて俺が行った方がいい。ミズカの弟を連れてくる」
「ご協力感謝します。では」
ジュンサーは安心すると、電話を切った。
「……ミズカはどうすんのよ? あんた、さっき自分が一番動けるって言ってたじゃない」
カスミの突っ込みにサトシは顔をしかめる。ミズカを探すことも大事だ。
「いや、だけど……」
「おそらく、ミズカの弟はミズカの記憶がないじゃろう。記憶がないところで説得はかなり難しい。何日か滞在も考えんとじゃぞ」
「記憶がないってどういうことですか?」
サトシが怪訝な表情になった。オーキドは腕を組む。サトシから目を逸らした。
「……流石に言わんとじゃな」
「何かあるんですか?」
カスミも聞く。サトシはシゲルを見る。シゲルもわからないらしく、小さく首を横に振った。やがてオーキドは諦めたように息を吐くと、口を開いた。
「時空間は繋げ方がとても複雑なんじゃよ。行きはよいよい帰りは怖い。行きの道に戻れなければ帰りの道がないということじゃ。ミズカが使っていた手鏡は、鏡の力で通った道を反射させて帰りの道を作っておった。時空間が歪み過ぎなかったのもそのおかげじゃ。じゃが、ミズカは今回、そのルートを通っていない。最悪のケースを考えると、ミズカは向こうに二度と帰れないかもしれん」
3人とも声が出なかった。ミズカは二度とあちらの世界へは帰れないかもしれない。ここまで言うということは、オーキドは確信に近いはずだ。
さらにオーキドは続けた。
「ノリタカが協力しているなら向こうへ帰ったはずじゃ。実際、戻れるなら戻った方が逃げやすいしのう。しかし、時空間の歪みは発生しておらん。つまりは帰り道を掻き消され、あちらの世界での存在を消された可能性があるんじゃ」
「……帰り道は見つからないんですか?」
シゲルが聞くと、オーキドは頷く。
「開きっ放しの時空であれば、戻ることは可能のはずじゃ。そう思って、わしも歪みの場所に行ったが綺麗に時空間は閉じられておった。時空間の扱いを知らない者の手口ではない」
「では、組織はすべてわかっててやったってことですか」
「そうじゃな。ということはじゃ、ミズカの弟も同様の手口で来る」
「……誰かが行くしかないってことですね」
シゲルは腕を組む。ミズカがあちらの世界へ本当に戻れないのかは、まだハッキリとはしていない。だったら、まずはやるべきことをやろうと考えた。
サトシには一番捕まってほしくないミズカを探してほしいのが、シゲルの本心だ。では、他にミズカの弟を連れてくる適任はいるだろうか。