9章 悲しき現実と蘇る記憶
「……俺達は、ミズカを探しに行こうぜ」
「そうね……」
サトシの言葉に、カスミが返事をした。サトシ達はヒナに掛ける言葉が見つからなかった。これは8年前にサトシが経験したことだ。親に妹が刺される。サトシはあのときさされたところは見ていないが、ヒナは見てしまった。
亡くなってしまったことまで考えると、声を掛けても慰めにならない。ある意味部外者の自分たちが入っていけるものではない。
サトシは喉に詰まるものを感じながら、カスミ、タケシとヒカリと外を出た。
「多分、あそこよね」
ヒカリが言うと三人は頷いた。ミズカのことだ。さっきの場所にいるだろう。4人は先程の場所へ向かう。もう少しで着くだろうという、少し手前で先にいたシゲルが立っていた。
「来るだろうと思って待ってたよ」
シゲルの言葉にサトシは苦笑した。シゲルは奥を指差す。近づいて行くと、ミズカの歌う声が聴こえて来た。
共に過ごした時間
忘れはしない
別れが来ても永遠に
皆仲間さ
心に残る思い出が
溢れてくる
支えの言葉に何度
助けられただろう
涙で滲んだ道を
一緒に進んでく
果てしない世界を
歩き続ける
大きな声響く
教室の中
賑やかで温かく
それが懐かしい
桜の木見守る校庭に
別れを告げ
優しく撫でる風に
何度も振り返る
涙で滲んだ道を
一緒に進んでく
果てしない世界を
歩き続ける
君との別れは
辛くて寂しいけれど
明日を信じ向かっていくよ
果てしない
果てしない大空へ
卒業式の曲だ。ミズカは、マルナが刺された所に立って歌っていた。
ミズカは混乱していた。今のことと、昔のことと。ぐちゃぐちゃに頭の中に流れてくる。頭が痛い。
流れてくる映像はすでに見覚えのある記憶だった。
8年前、自分はマルナと同じことをした。仲間が傷つくのが嫌で、父親に会いに行った。なんでマルナを連れてきてしまったんだろうと後悔している。同時になんで自分を庇ったのだと叱りたくもなる。
叱る相手はもういない。NWGで一番助けてくれたのに。一緒に旅をするからには、傷つけないと思っていたのに。カルナに毒でも盛りたい気分だ。しかし、マルナがこうしたことをミズカは理解していた。カルナをお願いしてきたということだ。未来をしっかりと守れとそう言われている。
歌を歌い終わったときには、少し整理がついていた。
「さようなら」
もう夜が明けそうな空を見上げて言った。
「……ミズカ」
サトシが彼女を呼んだ。ミズカは振り向く。その表情は、涙でぐちゃぐちゃだった。しかし、少しスッキリしたみたいで、無理矢理に口角を上げていた。
「今ね。マルナに、別れの挨拶してたんだ」
再び空を見上げる。
「また会おうって。……8年前みたいに」
ニコッと笑った涙顔で言ったミズカに、5人は驚いた表情を浮かべた。
「あんた、まさか……」
「そのまさか」
カスミに聞かれ、少し困った表情でミズカは言った。
こんな思い出し方はしたくなかった。しかし、あの八年前の記憶が。あの旅が。蘇ったのは嬉しくもあった。手で涙を拭い、ミズカは5人の前まで行く。
「迎えに来てくれてありがとう。戻ろうよ」
5人は頷いた。ミズカは彼らの少し前を歩く。嫌なことがあると、少し前を歩くのは昔にもあった。ミズカは今、表面上、笑ってはいるが、きっと後悔と悲しみでいっぱいのはずだ。泣きたいはずだ。それを隠すように、ポケモンセンターに着くまで、ずっと先程の歌を歌っていた。
「そうね……」
サトシの言葉に、カスミが返事をした。サトシ達はヒナに掛ける言葉が見つからなかった。これは8年前にサトシが経験したことだ。親に妹が刺される。サトシはあのときさされたところは見ていないが、ヒナは見てしまった。
亡くなってしまったことまで考えると、声を掛けても慰めにならない。ある意味部外者の自分たちが入っていけるものではない。
サトシは喉に詰まるものを感じながら、カスミ、タケシとヒカリと外を出た。
「多分、あそこよね」
ヒカリが言うと三人は頷いた。ミズカのことだ。さっきの場所にいるだろう。4人は先程の場所へ向かう。もう少しで着くだろうという、少し手前で先にいたシゲルが立っていた。
「来るだろうと思って待ってたよ」
シゲルの言葉にサトシは苦笑した。シゲルは奥を指差す。近づいて行くと、ミズカの歌う声が聴こえて来た。
共に過ごした時間
忘れはしない
別れが来ても永遠に
皆仲間さ
心に残る思い出が
溢れてくる
支えの言葉に何度
助けられただろう
涙で滲んだ道を
一緒に進んでく
果てしない世界を
歩き続ける
大きな声響く
教室の中
賑やかで温かく
それが懐かしい
桜の木見守る校庭に
別れを告げ
優しく撫でる風に
何度も振り返る
涙で滲んだ道を
一緒に進んでく
果てしない世界を
歩き続ける
君との別れは
辛くて寂しいけれど
明日を信じ向かっていくよ
果てしない
果てしない大空へ
卒業式の曲だ。ミズカは、マルナが刺された所に立って歌っていた。
ミズカは混乱していた。今のことと、昔のことと。ぐちゃぐちゃに頭の中に流れてくる。頭が痛い。
流れてくる映像はすでに見覚えのある記憶だった。
8年前、自分はマルナと同じことをした。仲間が傷つくのが嫌で、父親に会いに行った。なんでマルナを連れてきてしまったんだろうと後悔している。同時になんで自分を庇ったのだと叱りたくもなる。
叱る相手はもういない。NWGで一番助けてくれたのに。一緒に旅をするからには、傷つけないと思っていたのに。カルナに毒でも盛りたい気分だ。しかし、マルナがこうしたことをミズカは理解していた。カルナをお願いしてきたということだ。未来をしっかりと守れとそう言われている。
歌を歌い終わったときには、少し整理がついていた。
「さようなら」
もう夜が明けそうな空を見上げて言った。
「……ミズカ」
サトシが彼女を呼んだ。ミズカは振り向く。その表情は、涙でぐちゃぐちゃだった。しかし、少しスッキリしたみたいで、無理矢理に口角を上げていた。
「今ね。マルナに、別れの挨拶してたんだ」
再び空を見上げる。
「また会おうって。……8年前みたいに」
ニコッと笑った涙顔で言ったミズカに、5人は驚いた表情を浮かべた。
「あんた、まさか……」
「そのまさか」
カスミに聞かれ、少し困った表情でミズカは言った。
こんな思い出し方はしたくなかった。しかし、あの八年前の記憶が。あの旅が。蘇ったのは嬉しくもあった。手で涙を拭い、ミズカは5人の前まで行く。
「迎えに来てくれてありがとう。戻ろうよ」
5人は頷いた。ミズカは彼らの少し前を歩く。嫌なことがあると、少し前を歩くのは昔にもあった。ミズカは今、表面上、笑ってはいるが、きっと後悔と悲しみでいっぱいのはずだ。泣きたいはずだ。それを隠すように、ポケモンセンターに着くまで、ずっと先程の歌を歌っていた。