9章 悲しき現実と蘇る記憶
「此方としては死んでもらっては困るんだがな。このまま破滅の鍵が見つからないままも困る。お前も記憶を取り戻したいだろう? お前が記憶を戻すのに一番の方法でやってやる」
ニヤリと笑うカルナに鳥肌が立つ。どうすればいいのか。
「お前の父親は、どういう気分で刺したんだろうな」
それに驚いたのはタカナオだった。父親というのはノリタカのことだろう。もしカルナが再現している人がノリタカだとしたら……。タカナオはごくりと息を飲んだ。
「こんな風に一歩ずつ刃先を向けて近づいて来た。まあ、そんな感じだろう……」
「嫌……、やめて」
カルナが近づいてくる。ミズカの息は少しずつ上がっていた。覚えのない情景が浮かぶ。父親に刺された時のショック。そんなものを思い出したくないと心が抵抗している。
しかし、凄まじい勢いでミズカの中には過去の記憶が流れ込んでくる。
「やめろ!」
「あんた、自分のやってることわかってんの?!」
「最低よ」
サトシ、カスミ、ハルカが口々に言う。カルナは余裕の笑みを浮かべた。そして、ゆっくりと一歩ずつミズカに近づいて行く。ミズカは思い出したくない記憶に蓋をするように目を瞑った。
――助けなきゃ……。
マルナは金縛りを解こうと力を入れた。
ミズカに何度助けられただろう。独りだった自分を助けてくれた。ボスの娘で、その上、彼女のことが嫌いだった。それから、自分のことも嫌いだった。NWGにいたくないくせに、所属するしか存在価値がわからなかった。
そんなときにミズカがNWGに所属した。彼女は悪い任務には手を出さなかった。北風使いだという噂だって組織内にあった。後ろ指を指されても、彼女は自分を曲げなかった。そんなミズカにマルナはいつしか憧れた。
ミズカが組織を出るときについていったのは、少しでもミズカの孤独を助けたかったからだ。独りじゃない。それをわかって欲しかった。
さっき、気持ちが伝わったようだった。自分を大切だと言ってくれた。マルナ自身も孤独ではなくなった。
ここまでの生活が北風使いのせい?
そんなわけがない。母のせいだ。ミズカのおかげでマルナは前を向ける。
だからミズカには傷ついて欲しくない。きっと、この人なら未来を変えてくれる。
『マルナには感謝してるんだ』
感謝しているのはマルナの方だった。
――だから……。だから……!
そう思った時には、金縛りを自身で解いていた。途端に体が軽くなり、今にも刺されそうなミズカの前に立っていた。
ニヤリと笑うカルナに鳥肌が立つ。どうすればいいのか。
「お前の父親は、どういう気分で刺したんだろうな」
それに驚いたのはタカナオだった。父親というのはノリタカのことだろう。もしカルナが再現している人がノリタカだとしたら……。タカナオはごくりと息を飲んだ。
「こんな風に一歩ずつ刃先を向けて近づいて来た。まあ、そんな感じだろう……」
「嫌……、やめて」
カルナが近づいてくる。ミズカの息は少しずつ上がっていた。覚えのない情景が浮かぶ。父親に刺された時のショック。そんなものを思い出したくないと心が抵抗している。
しかし、凄まじい勢いでミズカの中には過去の記憶が流れ込んでくる。
「やめろ!」
「あんた、自分のやってることわかってんの?!」
「最低よ」
サトシ、カスミ、ハルカが口々に言う。カルナは余裕の笑みを浮かべた。そして、ゆっくりと一歩ずつミズカに近づいて行く。ミズカは思い出したくない記憶に蓋をするように目を瞑った。
――助けなきゃ……。
マルナは金縛りを解こうと力を入れた。
ミズカに何度助けられただろう。独りだった自分を助けてくれた。ボスの娘で、その上、彼女のことが嫌いだった。それから、自分のことも嫌いだった。NWGにいたくないくせに、所属するしか存在価値がわからなかった。
そんなときにミズカがNWGに所属した。彼女は悪い任務には手を出さなかった。北風使いだという噂だって組織内にあった。後ろ指を指されても、彼女は自分を曲げなかった。そんなミズカにマルナはいつしか憧れた。
ミズカが組織を出るときについていったのは、少しでもミズカの孤独を助けたかったからだ。独りじゃない。それをわかって欲しかった。
さっき、気持ちが伝わったようだった。自分を大切だと言ってくれた。マルナ自身も孤独ではなくなった。
ここまでの生活が北風使いのせい?
そんなわけがない。母のせいだ。ミズカのおかげでマルナは前を向ける。
だからミズカには傷ついて欲しくない。きっと、この人なら未来を変えてくれる。
『マルナには感謝してるんだ』
感謝しているのはマルナの方だった。
――だから……。だから……!
そう思った時には、金縛りを自身で解いていた。途端に体が軽くなり、今にも刺されそうなミズカの前に立っていた。