8章 交差

「NWGは、何の組織だか知ってるか?」
「世界の破滅を望んでいる組織」
「いやいや。表ではどうなってる?」
「慈善団体……」
「そう。つまり我々は素晴らしい信頼感のもと働いているのだ」

未だに、カルナが何を言いたいのかわからなかった。サトシを見るが彼もわからないらしく、首を傾げている。

「さて、本題に入るとしよう。まず、何故、私がお前の番号を知っているかだが……。この声を聞けば一発だな」

誰かが隣にいるらしく、別の声が聞こえて来た。

「ミズカ……さん。……すみません」
「リョウスケ!」

彼は捕まってしまったらしい。つまり、リョウスケのポケギアからミズカの番号を突き止めたのだ。動揺する。

「可哀想に。北風使いに協力せずにいたら、こんな目に遭うことはなかったのだがな」
「う……うるせぇ。こんな目に遭わせてんのは、お前らだ。ミズカさん……、心配ないです。……タカナオはマサトに頼みましたから……」

リョウスケの言葉に顔を歪める。タカナオと同じくらいリョウスケも心配なのだ。心配しないわけがない。

「ふん。それで、なんとかしたつもりか」
「カルナ! 何をすれば良い? 何か条件があって連絡して来たんでしょ?」

早く行きたい。早く助けに行かなくては。そう思うが、冷静に考えて、何も考えずにここを飛び出すのは危ない。グッとこらえた。

「マルナを連れてこい。そして、二人に組織に戻って来てもらいたい」
「な、何言って……」
「お前が何をし出すかわからないからな。昔の仲間にあったなら、もうお前を外へ出すメリットはない」
「……」
「嫌か。だが、リョウスケはどうなる」

言葉が詰まる。彼女なら、殺し兼ねない。

「まあ、それも此方に来られればの話だがな」
「え?」
「外を出ればわかる。お前は、闇の人間になっているからな」

フフフ……と不吉な笑みを漏らして、カルナは電話を切った。額から冷や汗が流れる。

「サト……シ。外を見て来てくれる?」
「あ、あぁ」

サトシは頷くと外へ出ていった。心臓が痛いくらい、ドンドンドンと叩いてくる。落ち着け。何度も頭で唱える。タカナオも心配だ。他にも、今まで旅をしていた仲間もいると言っていた。凄く不安になる。

ミズカは台所から、マルナ達のいる部屋へ戻り、状況を説明した。

「そんな……お母様が……。り、リョウスケは大丈夫なのですか?」
「とりあえず……」

その言葉にマルナは少し安心したようだった。

「ミズカ、見てきたぜ……」
「どうだった?」
「警察が警戒してる」

サトシが窓の外を見ながら言った。顔をしかめる。

「どういうことだい?」
「つまり……。……ミズカが指名手配されてるんだ」

シゲルが聞くと、重い口調でサトシは答えた。ミズカ達は目を見開く。

『我々は素晴らしい信頼感のもと、働いているのだ』

先程のカルナの言葉を思い出した。そういうことだったのか。あくまでNWGは、人を助ける正義の味方というポジションの組織。そして、ミズカはその組織を裏切り、世界の破滅を企んでいる、極悪非道な北風使い。仕組まれた。
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