8章 交差
「それにミズカがこっちと向こうの世界を往復してたときは、ずっと旅してたんだぜ? 記憶を戻したいなら、協力できる! サーナイトがどうやって進化したとか、どんなふうにポケモン捕まえてたかとか、バトルはどうだったかとか、俺は知ってる。思い出せないなら、ずっと待つ。思い出せなくても、ここから関係を作っていけばいい。みんなそのつもりだ」
「サトシさん……」
嬉しい。そんな事を言ってもらえるとは思っていなかった。記憶は思い出せない確率の方が遥かに高い。望めば望んだだけ、ショックを受けるのは自分もそうだが彼らもそうだ。
「『さん』付けも、敬語も止めようぜ! サトシで良いよ。昔はそう呼ばれてたから、凄く違和感があるんだ」
「いや、でも……。年上の方には……」
たとえ1つしか歳が違わなくとも、彼は年上だ。良いのかと迷う。
「年上なんて関係ないって。俺なんか5つ上のタケシにだって、タメ口だぜ」
そういう問題ではない。サトシがタケシに敬語でないのは、付き合いが長いからだ。そう思いながら、ホットケーキを見ると、もう出来たようで皿に盛った。そして次を焼き始める。
「タカナオも俺達にはタメ口だしさ」
「え、あの子がですか!?」
思わず声を張り上げた。タカナオは、そんなタイプではない。むしろミズカの方が年上についタメで話してしまう。
アニメでは、彼らは十歳だ。その上、アニメの話になれば、当然名前を口に出す。無論、さん付けなどはしない。親近感がありすぎて、無意識の内にタメ口を使っているのだろう。
「な? シゲルとか、これから会う仲間は皆、ミズカの敬語に違和感があると思うんだ。それくらい俺達は仲が良かったんだぜ!」
ニコッと笑うサトシは本当に嬉しそうだった。彼が言うなら間違いない。自分は、彼らと相当仲が良かったのだろう。ミズカは少し嬉しくなって、自然と笑みが溢れた。
「じゃあ、タメ口で。改めて、宜しく」
思わず、顔が赤くなる。こういうのは慣れない。そうして3枚目の生地を焼こうした時だった。ポケギアが鳴った。何か嫌な予感がして電話に出た。
「久しぶりだな。シャイル。いや、北風使いと言った方が良いかな」
「か、カルナ!?」
電話をしてきた相手はカルナだった。しかし、ミズカは彼女に電話番号を教えていない。どういうわけなのかよくわからなかった。隣では、サトシが驚いた表情で彼女を見ている。
ミズカはポケギアのスピーカーをつける。
「旅は楽しめたか? 黙って、ここまで待っていてやったんだ。少しは記憶を思い出せそうか?」
ミズカはぎゅっとポケギアを握る。確かに、ここまで自分のところには何もなかった。タカナオを狙っていたのもあるが、もしかしたら、サトシ達との再会を狙っていたのかもしれない。自分のことを占い師から聞いていれば、あるいはありえる。
「さて、今から出てきてもらおうか。お遊びはここまでだ」
「どういうこと?」
動揺する自分を落ち着かせようと、コンロの火を消した。テーブルの上に置いておいたサーナイトのモンスターボールを握る。
「サトシさん……」
嬉しい。そんな事を言ってもらえるとは思っていなかった。記憶は思い出せない確率の方が遥かに高い。望めば望んだだけ、ショックを受けるのは自分もそうだが彼らもそうだ。
「『さん』付けも、敬語も止めようぜ! サトシで良いよ。昔はそう呼ばれてたから、凄く違和感があるんだ」
「いや、でも……。年上の方には……」
たとえ1つしか歳が違わなくとも、彼は年上だ。良いのかと迷う。
「年上なんて関係ないって。俺なんか5つ上のタケシにだって、タメ口だぜ」
そういう問題ではない。サトシがタケシに敬語でないのは、付き合いが長いからだ。そう思いながら、ホットケーキを見ると、もう出来たようで皿に盛った。そして次を焼き始める。
「タカナオも俺達にはタメ口だしさ」
「え、あの子がですか!?」
思わず声を張り上げた。タカナオは、そんなタイプではない。むしろミズカの方が年上についタメで話してしまう。
アニメでは、彼らは十歳だ。その上、アニメの話になれば、当然名前を口に出す。無論、さん付けなどはしない。親近感がありすぎて、無意識の内にタメ口を使っているのだろう。
「な? シゲルとか、これから会う仲間は皆、ミズカの敬語に違和感があると思うんだ。それくらい俺達は仲が良かったんだぜ!」
ニコッと笑うサトシは本当に嬉しそうだった。彼が言うなら間違いない。自分は、彼らと相当仲が良かったのだろう。ミズカは少し嬉しくなって、自然と笑みが溢れた。
「じゃあ、タメ口で。改めて、宜しく」
思わず、顔が赤くなる。こういうのは慣れない。そうして3枚目の生地を焼こうした時だった。ポケギアが鳴った。何か嫌な予感がして電話に出た。
「久しぶりだな。シャイル。いや、北風使いと言った方が良いかな」
「か、カルナ!?」
電話をしてきた相手はカルナだった。しかし、ミズカは彼女に電話番号を教えていない。どういうわけなのかよくわからなかった。隣では、サトシが驚いた表情で彼女を見ている。
ミズカはポケギアのスピーカーをつける。
「旅は楽しめたか? 黙って、ここまで待っていてやったんだ。少しは記憶を思い出せそうか?」
ミズカはぎゅっとポケギアを握る。確かに、ここまで自分のところには何もなかった。タカナオを狙っていたのもあるが、もしかしたら、サトシ達との再会を狙っていたのかもしれない。自分のことを占い師から聞いていれば、あるいはありえる。
「さて、今から出てきてもらおうか。お遊びはここまでだ」
「どういうこと?」
動揺する自分を落ち着かせようと、コンロの火を消した。テーブルの上に置いておいたサーナイトのモンスターボールを握る。