1章 北風使いの生まれ変わり
右肩にエナメルバッグの重さを感じながら、高校2年生17歳のミズカは帰路を歩いていた。運動した後で少し眠い。頭もボーッとする。
そんなふうに思っていると、ジャージのポケットに入れた携帯が震える。
『来週空いてる!? カラオケ!』
届いたメールにミズカは口角を上げた。立ち止まって、友人のリンに返事を打つ。リンとは高校は違うが中学の同級生だった。
最近はしょっちゅうカラオケに行っている。約束をして、携帯をポケットにしまう。
「お前が……北風使いか」
不意に前から、声をかけられた。赤髪を腰まで流した女性だった。この辺では見掛けない風貌。明らかに、目の前の女性は浮いている。
裏道から帰っているからか、人通りがない。ミズカに話し掛けたには違いないが、首を傾げた。
――北風使い……?
心に北風使いという言葉が響く。北風使い……。初めて聞いた言葉のはずなのに、何が引っ掛かっているのか。それでも、ミズカには目の前にいる女性が酔っ払いか何かに見える。
引っ掛かっているのは気の所為。そう思い素通りする。
スタスタ歩いていると、後ろから声がした。
「アリアドス、糸をはくだ」
振り向くと女性の隣には、この世界にはいない生き物がいた。ミズカがハッとした後にはもう遅く、糸をはくで身動きができなくなった。
アリアドス……。この世界にはいない生き物。いないが、ミズカはこの生き物を知っている。
「……ぽ、ポケモン?!」
「何を驚いている。お前も昔はトレーナーだっただろう?」
ニヤッと笑う相手に、息を飲んだ。
ポケモン。それはミズカが大好きなもの。ゲームもやっているし、アニメだって毎週欠かさず見ている。そこに出てくるのがポケモン。不思議な不思議な生き物。この世界の動物図鑑には載っていない。
「……トレーナー?」
ミズカは聞き返す。トレーナーはポケモンをゲットしたり、バトルさせたりする職業のことだ。無論、この世界に存在しない職業。
わけがわからない。しかし、このままだとまずい。捕まったということは、知らない所へ連れて行かれる。そう思って、解こうとするが、なかなかどうしてアリアドスの糸は強力だった。
「お前には、手伝いをしてもらう」
赤髪の女性の背後には大きな扉がある。光がミズカを包み込む。扉も光もどこか既視感があった。
「う……」
そのまま、光に飲み込まれると、赤髪の女性とともにミズカは忽然とその場から姿を消した。
そんなふうに思っていると、ジャージのポケットに入れた携帯が震える。
『来週空いてる!? カラオケ!』
届いたメールにミズカは口角を上げた。立ち止まって、友人のリンに返事を打つ。リンとは高校は違うが中学の同級生だった。
最近はしょっちゅうカラオケに行っている。約束をして、携帯をポケットにしまう。
「お前が……北風使いか」
不意に前から、声をかけられた。赤髪を腰まで流した女性だった。この辺では見掛けない風貌。明らかに、目の前の女性は浮いている。
裏道から帰っているからか、人通りがない。ミズカに話し掛けたには違いないが、首を傾げた。
――北風使い……?
心に北風使いという言葉が響く。北風使い……。初めて聞いた言葉のはずなのに、何が引っ掛かっているのか。それでも、ミズカには目の前にいる女性が酔っ払いか何かに見える。
引っ掛かっているのは気の所為。そう思い素通りする。
スタスタ歩いていると、後ろから声がした。
「アリアドス、糸をはくだ」
振り向くと女性の隣には、この世界にはいない生き物がいた。ミズカがハッとした後にはもう遅く、糸をはくで身動きができなくなった。
アリアドス……。この世界にはいない生き物。いないが、ミズカはこの生き物を知っている。
「……ぽ、ポケモン?!」
「何を驚いている。お前も昔はトレーナーだっただろう?」
ニヤッと笑う相手に、息を飲んだ。
ポケモン。それはミズカが大好きなもの。ゲームもやっているし、アニメだって毎週欠かさず見ている。そこに出てくるのがポケモン。不思議な不思議な生き物。この世界の動物図鑑には載っていない。
「……トレーナー?」
ミズカは聞き返す。トレーナーはポケモンをゲットしたり、バトルさせたりする職業のことだ。無論、この世界に存在しない職業。
わけがわからない。しかし、このままだとまずい。捕まったということは、知らない所へ連れて行かれる。そう思って、解こうとするが、なかなかどうしてアリアドスの糸は強力だった。
「お前には、手伝いをしてもらう」
赤髪の女性の背後には大きな扉がある。光がミズカを包み込む。扉も光もどこか既視感があった。
「う……」
そのまま、光に飲み込まれると、赤髪の女性とともにミズカは忽然とその場から姿を消した。
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