9章 ピチューを救え!

「研究材料って……。ポケモンは生きてるのよ! そんなの嫌に決まってるじゃない!」
「そうだぜ! ポケモンは道具じゃないんだ!」
「知らねぇな。コイツらどうすんだ、バショウ」
「まだ、子供です。軽く吹っ飛ばしといて下さい」
「あいよ!」

ブソンはボキボキっと手を鳴らす。ミズカとサトシは腰に手を掛ける。向こうがその気なら、こちらもバトルで応じるしかない。ピリッとした空気の中、

「ちょっと待ってください」

止めたのは、ブソンに命じたバショウだった。

「なんだ!」
「ブソン、このピチューをよく見ましたか?」
「あぁ? 見たぞ!」
「じゃあ、後ろにある模様はなんです?」
「あ! あの模様は……」
「え?」

ミズカはピチューの後ろを見た。よく見ると、尻尾の横に星の形をした模様があった。ピチューはブソンが見た時うまく尻尾で隠したのである。

ピチューはミズカに抱きついた。身体が震えている。どうやら、本当らしい。

「ピチュー……」
「ピ……」
「危うく、見逃すところでした。だいぶ、探しましたからね……」
「だいぶ? かなりだ!」

バショウもブソンも見つかったことで一気にスイッチが入ったようだ。ギロリとミズカを睨む。

「大人しくピチューを渡してください」
「嫌だ! ピチューだって嫌がってるでしょ!」
「そいつは、途中まで色んな事をやってんだ。強くなりたかったら手放した方がいいぜ!」
「え?」
「そのピチューは一生スピードが遅いままです。バトルはスピードが大事。それはトレーナーの貴女がよくご存知のはず」

ミズカは今までのバトルを思い出す。たしかに、素早さが上がらないとは思っていた。ピチューももどかしそうにしていたことが何度がある。その原因がロケット団だったとは……。

ミズカはとても悲しくなった。そして、悔しくもなった。

「そんなことない! もしピチューの速さが一生このままでも、バトルの仕方は他にある!」
 
ミズカはロケット団を睨みつけた。ピチューが遅いからなんだ。バトルは能力で決まらない。それは今までのバトルから学んでいる。

それに簡単に渡すわけがない。ピチューは自分のところにいたいと言ってくれた。ミズカだってピチューと一緒にいたい。何があっても守る。ミズカはピチューを抱きしめる腕に力を入れた。
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