9章 ピチューを救え!

「じゃ、いってくるわよ」
「いってきます!」

カスミとミズカが手を振りながら森の中へ入っていった。今日は二人が薪を拾う当番。二人は道を歩く。しかし、なかなか薪が見つからなかった。

「ねえ、虫とかでないわよね?」
「出るかもね」
「それにこのまま、夜にでもなったどうすんのよ!」
「……迷うかもね」

ミズカは苦笑した。今は夕方。まだ暗くはならない。しかし、カスミは心配している様子だった。ついてきたエーフィとチコリータは苦笑している。

「でも、そんな暗くなるまで探さないと薪が見つからないって事はないでしょ?」
「そうだけど……」
「ようするに虫やらお化けやらが怖いと?」
「うん……。虫はともかくお化けはミズカだって怖いでしょ!」

謎のキレ方をするカスミにミズカは笑いを堪える。そして、肩を竦めた。

「え、別に? まあでも昔は怖かったなぁ。カスミより酷かった……」
「じゃあ、なんで今は平気なのよ?」
「見えるの」
「なに……が?」

恐る恐る聞いてけるカスミに、ミズカは口角を上げ、にやりとした。

「幽霊がね……」

カスミは、聞いた瞬間硬直した。

「ごめんごめん! それでもいつでも見れるってわけじゃないのよ。時々しか見えないんだけど……」
「あ、そうなんだ……」
「でも、見えなかったときはハッキリ言ってすごくやばかった。お化け屋敷も全然入れないし、入ってもいつもお父さんの後ろにへばりついてたんだ! でも……」

ミズカは一瞬顔色が変わった。お化け屋敷なんて、随分前の記憶だった。自分が幼稚園の時。母が夜に仕事へ行くようになる前のことだ。

「どうしたの?」

カスミはミズカの様子が気になり、顔を覗く。ハッとして、ミズカは首をブンブン横に振って、笑った。

「ううん、なんでもない! 薪探しに行こうよ! こんな話してたら、ホントに夜になっちゃうよ?」

ミズカは歩く速度を少し上げて、カスミに顔を見られないようにした。何を今更動揺しているのだろうか。両親の離婚は前から聞いていて覚悟できていたことではないか。

しばらく、歩いてるとやっと薪を見つけた。それを二人は拾う。カスミはその間、ずっとさっきのミズカの顔が気になっていた。

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