8章 気持ちの正体
「恋か……」
ミズカはシゲルを思い浮かべる。サキコにシゲルに対する気持ちは恋だと言われた。
少女漫画を見つめる。一緒にいたい? そんなことは思っていない。しかし、全く興味のなかったところから、もっと知りたいと思ったのは事実だ。彼をもっと知られたらと思う。
それに、確かにこないだの行動は自分でも変だと思った。わざわざシゲルに会いに向こうの世界へ行った。それが、この少女漫画に描かれている「会いたい」という気持ちなら、あるいはあり得るのだろうか。
とはいえ、ミズカは納得はいっていない。一度しか会ってないはずだ。その一回で好きになる? 本当に?
そもそも、本当にあれが一度目だったのだろうか……。
「ミズカ」
お母さんに思考を切られる。
「じゃあ、後はお願いね」
バッチリと化粧を決めたお母さんは、夜の格好をしていた。ミズカには夜の仕事がどういうものなのかはわからない。だが、お酒の匂いを漂わせながら千鳥足で帰ってくる母親は相当な無理をしているのは理解している。
「うん。いってらっしゃい」
母の背中を見つめる。お母さんは、タカナオにも手を振って行ってしまった。タカナオは明らかに肩を落とし、お風呂に入っていった。彼はきっとお風呂から上がったらすぐに眠ってしまうだろう。
ミズカはため息をつく。父親はいつ帰るかわからない。いつも思う。なぜ、母と父は恋に落ちたのか。結末は最悪。これから二人には、いつだかは決まっていないが離婚が待っている。家庭崩壊もいいところだ。
「そんなあたしが……、恋……?」
認められない理由はきっとここにある。ゆっくり立ち上がって、読んだ少女漫画を紙袋に戻す。明日、サキコに返すためにランドセルの横に置いた。
何故だかわからないが泣きそうになる。少女漫画はいくらでもハッピーエンドで終われるが、現実は違う。今、この現状が物語っている。だからこそ、今は夜にポケモン世界に行けることで救われている。独りが嫌だ。でも今は独りにならない場所がある。
「ドラマ観よーっと」
気を取り直して、ミズカはテレビをつけた。いつも楽しみにしているドラマは、その日ばかりはダラダラと流しているだけだった。
ミズカはシゲルを思い浮かべる。サキコにシゲルに対する気持ちは恋だと言われた。
少女漫画を見つめる。一緒にいたい? そんなことは思っていない。しかし、全く興味のなかったところから、もっと知りたいと思ったのは事実だ。彼をもっと知られたらと思う。
それに、確かにこないだの行動は自分でも変だと思った。わざわざシゲルに会いに向こうの世界へ行った。それが、この少女漫画に描かれている「会いたい」という気持ちなら、あるいはあり得るのだろうか。
とはいえ、ミズカは納得はいっていない。一度しか会ってないはずだ。その一回で好きになる? 本当に?
そもそも、本当にあれが一度目だったのだろうか……。
「ミズカ」
お母さんに思考を切られる。
「じゃあ、後はお願いね」
バッチリと化粧を決めたお母さんは、夜の格好をしていた。ミズカには夜の仕事がどういうものなのかはわからない。だが、お酒の匂いを漂わせながら千鳥足で帰ってくる母親は相当な無理をしているのは理解している。
「うん。いってらっしゃい」
母の背中を見つめる。お母さんは、タカナオにも手を振って行ってしまった。タカナオは明らかに肩を落とし、お風呂に入っていった。彼はきっとお風呂から上がったらすぐに眠ってしまうだろう。
ミズカはため息をつく。父親はいつ帰るかわからない。いつも思う。なぜ、母と父は恋に落ちたのか。結末は最悪。これから二人には、いつだかは決まっていないが離婚が待っている。家庭崩壊もいいところだ。
「そんなあたしが……、恋……?」
認められない理由はきっとここにある。ゆっくり立ち上がって、読んだ少女漫画を紙袋に戻す。明日、サキコに返すためにランドセルの横に置いた。
何故だかわからないが泣きそうになる。少女漫画はいくらでもハッピーエンドで終われるが、現実は違う。今、この現状が物語っている。だからこそ、今は夜にポケモン世界に行けることで救われている。独りが嫌だ。でも今は独りにならない場所がある。
「ドラマ観よーっと」
気を取り直して、ミズカはテレビをつけた。いつも楽しみにしているドラマは、その日ばかりはダラダラと流しているだけだった。