8章 気持ちの正体

「別に初対面で嫌な顔されたんなら、気にしないでスルーすれば?」  
「そうなんだけど……。あ、でも、あたしがご飯誘ったら頷いてくれる。でも、あたしのせいなのか、食事も喉に通らなかったみたいで……」

カナタの質問に答えるミズカの声はどんどん小さくなる。

「そんなことある?」

カナタは顔をしかめた。

「だから気になって仕方ないというか……。次会ったときには、聞こうと思ってるんだけど」
「どんな人なの?」
「自信家で、共通の友達をからかうこともあるんだけど、でも影ではきっとすごく努力をしていて、あたしが嫌でも誘いに頷いてくれる大人な人」
「え、もしかして、すごーく年齢高いの?」
「ううん。そんな違わない」

サキコの質問にますます首を傾げるのはリキヤだった。

共通の友達?
ミズカは果たして、小学校以外に友達がいるのだろうか。幼稚園の友達だったら、自分には誰か言えるはずだ。それに、他の友達の話は今まで出たことがない。

なんだかモヤモヤする。

「ミズカ。共通の友達って、俺の知ってる人?」
「ううん。その子とも一年前ぐらいに知り合った。そういえば話してなかったね」

ミズカは少し話しすぎたと感じた。それもそのはず。リキヤは幼稚園の頃からの仲だ。互いに友達関係は把握している。それが急に知らない人が話題に上がったら、不思議に思うのは当然だった。

「どこ小?」
「え?」
「いやー、ちょこちょこ会ってるなら、近場かと」

カナタに聞かれて、ミズカは背中に汗が流れていくのを感じた。
 
「近場と言えば近場だけど、遠いと言えば遠いかな」
「はあ?」

カナタが首を傾げる。

「会える距離なら俺一緒に行く?」
「え、なんで?」

カナタの言葉にミズカは目をパチクリさせた。なぜ、わざわざカナタがシゲルに会おうと言うのか。ミズカはよくわからない。それを見て、サキコもリキヤもため息をついた。

「ほんと鈍感……」
「ねぇねぇ、ミズカちゃんは、その人に顔をしかめられたときに何か感じたことないの? ただ顔をしかめられても気にならないと思うんだけどー?」

サキコの言葉にミズカは考える。そういえば、きっかけはあった。
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