8章 気持ちの正体

ふと、カスミは横を眺めた。

「あれ、トゲピーは!?」

そこにいたはずのトゲピーがいない。辺りを見回してもトゲピーの姿はない。しかも、ピチューもいなかった。

「エーフィ、チコリータ。ピチューは?」

エーフィは少し疲れてうたた寝しており、チコリータは目の前の美味しいポケモンフーズに夢中だった。ミズカとカスミは勢いよく立ち上がる。エーフィもチコリータも何が起こったのか理解できたらしく、立ち上がった。

牧場の外に出ても、二匹の姿が見当たらない。そんなに遠くへは行っていないはず。エーフィは匂いを嗅いだ。トゲピーとピチューの匂いは同じ方向にある。ミズカたちはエーフィについていくことにした。

トゲピーが眠っていたのは、ミルタンクの群れがいるところだった。藁が敷かれている上にすやすやと眠りについている。その様子をミルタンク達とピチューが優しい表情で観ていた。

ピチューはトゲピーの面倒を見てくれていたようだ。

「こんなところで寝てたの?」
「ピチュピチュ」

ピチューの身振り手振りで読み取るには、どうやらミルタンクと遊んでいたらしい。気がつけば疲れていて、トゲピーが眠りについてしまった。

「呼んでくれれば良かったのに。二人ともいないからビックリしたよ」
「ピチュ……」
「でも、面倒を見てくれて、ありがとう。ピチューがついてなかったら、トゲピーが一人だった」

ミズカはピチューの頭を撫でる。ピチューは少し反省しながらも、誇らしげだった。

「ピカチュウがバトルの時とか、トゲピーの面倒をこれからお願いしちゃおうかなぁ」
「確かに、それいいかも」

カスミの言葉にミズカが頷く。ピチューは嬉しそうに何度も頷いた。

「じゃあ、ピチュー。これから、君にはトゲピーの世話役を命ずる!」
「ピチュ!」
「心して掛かるように!」
「ピッ!」

敬礼するミズカに狙って、ピチューも敬礼する。ピチューはトゲピーの世話役になった。

結局、シゲルには会えなかったが、モーモーミルクを飲み、モーモーミルクのソフトクリームを食べ、牧場を堪能した。満足したミズカはもとの世界に帰っていった。
6/12ページ
スキ