8章 気持ちの正体

「そうだったのね。大会は昨日終わっているから、違う方向に向かったかもしれないわね……。あ、そうだ。良かったら、牧場見学していって!」
「ありがとうございます。ちょっと行ってきます」

頭を下げて、牧場に向かった。青空が気持ちがいい。エーフィ達をボールから出す。


牧場に出ると、遠くで、ミルタンクの乳搾りを体験しているサトシ達がいた。牛に酷い目にあっているとはいえ、やればよかっただろうかとミズカは思う。

ちょうどサトシが挑戦するところ。遠目に見ると、サトシの力が強かったらしく、ミルタンクにビンタを食らっていた。それを見て、ミズカはやはりやらなくてよかったと思った。

サトシから目を離し、ミズカは広大な牧場を見つめた。進んでいくと、メリープやモココ達がいるエリアにたどり着く。

「メェ~」

何が起きたのか。メリープやモココが一斉にミズカに群がってくる。こないだチヒロのメリープもすり寄ってきたな、と思いながら、ミズカはメリープ達に埋もれた。

「あんた、何してんの?」

カスミの声が聞こえる。しかし、メリープで埋まっているミズカにはカスミが見えなかった。しかも息も辛い。話せない。手を伸ばすと、察したカスミが引っ張り出してくれた。

「チョゲチョゲ!」
「トゲピー楽しそうだね……」
「髪の毛ボサボサじゃない」
「そりゃでんきタイプにもふもふされたら……」

髪の毛もボサボサになる。バチバチバチと音を鳴らしながら、ミズカは手で髪の毛を梳かす。
  
「ところでカスミは体験終わったの?」
「サトシが殴られてるところ見てやめたわ。トゲピーも危ないし」
「さっき殴られてたね」

肩を竦めるカスミにミズカは笑った。ミズカもカスミも少し牧場を堪能すると、小屋に戻り、二人でモーモーミルクを頼んだ。

「そういえば、シゲルはもういいの?」
「うん。一昨日までポケモンライドの練習できてたみたいだけど、今日は来てないって。だから違う方向行ったんだと思う。流石に諦めるよ」

カスミの質問に素直に答える。カスミはミズカがシゲルに会うことを忘れていなかったことに少し驚く。普段なら、もう忘れてたと言うはずだ。

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