8章 気持ちの正体

一晩キャンプをし、一山越えた先に牧場はあった。

思っていたよりも規模が大きく、メリープやモココ、デンリュウ。ミルタンク、ケンタロス、ドード、ドードリオまでいる。

「ミルタンクがいるってことは……、モーモーミルク飲める?」
「俺も飲みたい!」

ミズカがタケシに聞くと、サトシも目を輝かせてタケシを見た。タケシはガイドブックを読むと、口角を上げる。

「美味しくて有名みたいだな」
「嬉しい……! 飲めるんだ」

ミズカはモーモーミルクが飲めることを知って喜ぶ。先の方に小屋が見て、ミズカとサトシは走っていく。タケシとカスミもため息混じりに追いかけた。

小屋に入ると、お土産屋さんにカフェ、それからミルタンクの乳搾り体験とポケモンライドの練習受付があった。どうやらライズタウンが近いため、ポケモンライドの練習場も担っているらしい。

「乳搾りできるって! やろうぜ!」

声を上げるサトシに、カスミもタケシも頷くのだが、珍しくミズカだけ難色を示す。

「あんたがサトシに乗らないの珍しいじゃない」
「いや、乳搾りは牛に蹴られた記憶しかないし」
「牛? 乳牛じゃなくて?」

聞き返されて、ミズカはハッとする。

「あ、うん。もとの世界にも乳搾りできるミルタンクに似た生き物がいるんだけど、あたし力の加減が下手なのか蹴られたことしかないんだよね」

苦笑するミズカは、黒と白の動物を思い浮かべる。

「だから、みんなで行ってきて? 牧場も見学できるみたいだから、あたしはそっち行くよ」
「わかった。じゃあ、後でここに集合な」

こうして、ミズカは別行動することにした。ミズカはサトシ達が行ったのを確認すると、受付の人に話し掛ける。

「あの。さっき、紫の服に緑と黄色のペンダントをした男の子が来ませんでしたか?」

気になって聞いてみると、店員は少し考え、そして思い出したように手を叩いた。

「ああ、シゲルくん?」
「はい、そうです」
「それなら、一昨日までここでポケモンライドの練習していたけれど、今日は来てないわね」
「そうですか……」

どうやらシゲルは違う方向に向かったらしい。これはもう諦めるしかない。

「お友達?」
「え? し、知り合いです。ポケモンライドで準優勝したみたいだったので……」

まさか、嫌われているかもしれないのに友達だとは言えない。だから、知り合いにした。咄嗟にポケモンライドの大会を思い出して、取ってつけた理由を口にする。
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