8章 気持ちの正体

「ミズカ?」

ミズカが後ろを振り向くと、サトシ達だった。サトシの手には、ライズタウンの育て屋夫婦からもらったケースに入ったポケモンの卵がある。

「みんな! あ、それ。卵!?」
「ああ、さっきもらったんだ」
「優勝おめでとう」
「知ってたのかよ」

サトシは少し驚くが、それでもミズカの事情は知っているので、あまり大袈裟にはならなかった。ピカチュウは卵ケースが気になるのか、ツンツンしている。

そう。優勝したのはサトシ。ベイリーフで出場し、少しの差でシゲルに勝っていた。

「それじゃ、あたし行くところがあるから」
「どこ行くのよ?」
「シゲルを探してて」
「シゲル?」

カスミは首を傾げた。サトシもタケシも不思議そうにミズカを見つめる。エーフィはサトシ達に会えば、諦めるだろうと思っていたため、まだ探すと言われてドギマギする。

「うん。こないだのモヤモヤを晴らしたくて」
「そういえば、言っていたな」

タケシが思い出したように言うと、ミズカは頷いた。

「気持ちはわからなくないが、もう暗いから見つからないと思うぞ。それにここから先の行き方はいくつもあるからなぁ」
「そうよ。危ないからやめときなさいよ」
「うーん……」

タケシとカスミからの説得にミズカは顔をしかめる。今日はシゲルに会いに行くのが目的だった。だが、二人は危険だと許してくれそうにない。

「この山を一つ超えたところに牧場がある。そこはトレーナーが多く利用するから可能性としてあるかもしれないぞ。俺たちもそこへ向かうから一緒に行かないか?」

タケシにそう言われて、ミズカはやっと納得した。エーフィはホッとするものの、牧場にシゲルがいたらとも考える。が、今はサトシ達も一緒だ。一先ず、流れに身を任せることにした。

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