1章 ポケモン世界へ!?
「うるさいわねぇ! あんたの物はあたしの物、あたしの物もあたしの物なのよ!」
ミズカに口上を止められて、ムサシが怒り出す。そして、ここからミズカとムサシの言い合いになった。
「ポケモンは物じゃないわ!!生きてるのよ!!」
「なによ! 見かけない顔のくせによく言うわね!」
「そんなの関係ないわよ!!」
「ちょ、ムサシこの辺で……」
コジロウはムサシを止めようとしたが、
「うるさいわね~、このジャリンコむかつくのよ!!」
ムサシはコジロウの言葉をまったく聞いていない。
「ムカつくって、あんた達が悪いんじゃない!!」
「そんなこと知らなーい、あたし達、悪だもーん!」
「いつまで経っても、ピカチュウ捕まえられないのに悪なんか名のっていいの?」
「ムッカー!! ん? 何であんたあたし達がピカチュウをずっと追かけてんの知ってんのよ!」
当然ムサシは、ミズカが別の世界から来ている事を知らないわけである。ミズカはハッとした。
「あっ……、そんなの別にいいでしょ! 早く返して!!」
別の世界から来ているという説明を彼らにするのも億劫で、ミズカはとにかく自分の要望を訴える。
「しつこいわね~! 行け!アーボック! 毒針!!」
「シャー!!」
ついにムサシは自分の相棒アーボックを出す。アーボックはミズカに向かって毒針を飛ばした。
「ミズカ!」
カスミが声を上げる。ミズカはその声に反応して、目の前から飛んでくる毒針をしゃがんで、辛うじてかわした。
「あー、危なかった……」「あんたポケモン出しなさいよ! ムカつくからポケモンバトルでブッ倒すわ!」
「残念ね! やりたい気持ちはかなりあるんだけど……、あたしイーブイしか持ってないのよね!」
「あんた……、新人トレーナー?」
「そういうこと!!」
ムサシは、目を丸くする。ミズカは決して威張れることではないが、新人であることを誇らしげにした。
「いつまで続くんだ?」
「さあ……」
「ここで引き返した方がいい気がするんだけど……」
「でも、ムサシは止まりそうにないのにゃ……」
サトシとタケシが出方を考えながらも、終わりそうない言い合いに呆れた。
コジロウとニャースもこの言い合いに飽きていた。
「じゃあ、いいわ! ニャース! あの網を切ってイーブイを出しておやり!!」
「にゃ!? そしたら、ピカチュウまで――」
「ぶつぶつ言ってないで早くしなさい!!」
ムサシにとって、今は目の前の見知らぬジャリガールを倒すことが大事だった。ピカチュウのことなど忘れている様子である。ニャースはしぶしぶ網を切った。
「ブーイ!!」
「ピカピー!!」
二匹がこちらに向かってくる。ミズカとサトシはそれぞれのパートナーを抱きしめた。
「さてと……、サトシ後は任せるわ!」
「えっ?」
「あたしまだ、イーブイの覚えてる技知らないから……」
てっきりミズカはバトルモードなのだと思っていたサトシは拍子抜けしながらも、「あぁ、そっか」と納得した。ミズカは頷いて、サトシとピカチュウに任せる。