8章 気持ちの正体
今日はポケモンのアニメがやる日。ミズカは、いつものようにテレビの前でサトシ達の活躍を観ていた。今日の内容は、ライズタウンという場所で、ポケモンライドの大会に出場するというもの。ポケモンにそりを引かせる競技で、そりにはトレーナーが乗る。
いつもなら楽しそうだと思って、ワクワクするミズカだが、今日は違った。
「シゲルだ……」
観ながら呟く。シゲルもウインディで大会に出場していた。穏やかな表情。サトシと仲のいい彼を見て思う。
なぜ、自分に対して、あんな風に顔をしかめたのか。単純に苦手なら、なぜ初対面でそう思ったのか。ミズカはシゲルのことを知っているが、向こうは知らないはずなのだ。
画面の中のシゲルは、微笑んだりしているのに。自分にはない。学校でも友達と喧嘩したときに嫌な顔をすることはあるが、彼の表情は少し違った。
思い返せば思い返すほど、あのしかめた表情は自分を知っている顔だった。そして、たとえば、二度と会いたくないと思う人に向けるような……、そんな表情にミズカは感じていた。
向こうがそんな気持ちなら、ミズカは気にせずに関わらなければ良い話なのだが、それでもミズカの胸の奥は大きなフックが掛かっている。キュッと胸の奥が痛む。経験したことのない痛みのはずなのに、どこかで経験したことがある痛み。
この気持ちは何なのか。
ミズカは居ても立っても居られず、その夜、ポケモンの世界に飛び込んだ。
辺りはもう暗くなっていた。遠くにライズタウンが見える。育て屋の多い町には興味があったが、背を向けて歩き出した。
確か、サトシ達と進行方向が同じだった。いつもサトシ達の近くに出てくることを考えると、進む方向は間違っていないはずだ。暗い夜道を考え、ミズカはエーフィを出した。
「エーフィ、シゲルを探してほしいの」
「フィ?」
エーフィは首を傾げる。
「シゲルが近くにいるはずなの。お願い!」
ミズカにお願いされ、エーフィは困った。確かに、サトシ達の匂いとは別に、シゲルの匂いも微かに残っている。しかし、エーフィはミズカをシゲルに会わせたくはなかった。
「こないだ、顔しかめてたじゃん? だから、なんでなのか聞こうと思って……」
何故なのか。それはミズカが今知ることではない。知らなくて良いことだし、仮にシゲルに会えたとして、ミズカが傷つく可能性があるなら会う必要はない。
「フィ……」
「あ、シゲルがあたしに対して、良い印象がないのはわかってるよ? でも、なんか引っ掛かってて……。この引っ掛かりが何かを知りたいんだよね」
エーフィは一応頷いてみせた。そして、シゲルの匂いではなく、サトシの匂いを追う。エーフィは心の中でミズカに謝る。けれど、今は……。
いつもなら楽しそうだと思って、ワクワクするミズカだが、今日は違った。
「シゲルだ……」
観ながら呟く。シゲルもウインディで大会に出場していた。穏やかな表情。サトシと仲のいい彼を見て思う。
なぜ、自分に対して、あんな風に顔をしかめたのか。単純に苦手なら、なぜ初対面でそう思ったのか。ミズカはシゲルのことを知っているが、向こうは知らないはずなのだ。
画面の中のシゲルは、微笑んだりしているのに。自分にはない。学校でも友達と喧嘩したときに嫌な顔をすることはあるが、彼の表情は少し違った。
思い返せば思い返すほど、あのしかめた表情は自分を知っている顔だった。そして、たとえば、二度と会いたくないと思う人に向けるような……、そんな表情にミズカは感じていた。
向こうがそんな気持ちなら、ミズカは気にせずに関わらなければ良い話なのだが、それでもミズカの胸の奥は大きなフックが掛かっている。キュッと胸の奥が痛む。経験したことのない痛みのはずなのに、どこかで経験したことがある痛み。
この気持ちは何なのか。
ミズカは居ても立っても居られず、その夜、ポケモンの世界に飛び込んだ。
辺りはもう暗くなっていた。遠くにライズタウンが見える。育て屋の多い町には興味があったが、背を向けて歩き出した。
確か、サトシ達と進行方向が同じだった。いつもサトシ達の近くに出てくることを考えると、進む方向は間違っていないはずだ。暗い夜道を考え、ミズカはエーフィを出した。
「エーフィ、シゲルを探してほしいの」
「フィ?」
エーフィは首を傾げる。
「シゲルが近くにいるはずなの。お願い!」
ミズカにお願いされ、エーフィは困った。確かに、サトシ達の匂いとは別に、シゲルの匂いも微かに残っている。しかし、エーフィはミズカをシゲルに会わせたくはなかった。
「こないだ、顔しかめてたじゃん? だから、なんでなのか聞こうと思って……」
何故なのか。それはミズカが今知ることではない。知らなくて良いことだし、仮にシゲルに会えたとして、ミズカが傷つく可能性があるなら会う必要はない。
「フィ……」
「あ、シゲルがあたしに対して、良い印象がないのはわかってるよ? でも、なんか引っ掛かってて……。この引っ掛かりが何かを知りたいんだよね」
エーフィは一応頷いてみせた。そして、シゲルの匂いではなく、サトシの匂いを追う。エーフィは心の中でミズカに謝る。けれど、今は……。