7章 チコリータはチコリータ

「つるのムチ!」

つるのムチでジャンプして、なんとか躱す。 

「ミズカもチコリータも、やるじゃない」

カスミが声を上げる。

昨日、タケシとカスミに手伝ってもらい、森の中で特訓をした。なんの特訓か。それはチコリータだからできる戦い方を覚えるというもの。チコリータはベイリーフより軽い。だったら、つるのムチを使って、ベイリーフの攻撃圏内になるべく入らないようにするのが一番だ。昨日はつるのムチの使い方をチコリータが特訓し、ミズカは戦い方を教わった。

のしかかりで地面にアタックしたベイリーフはうまく切り返しができない。それを狙って、チコリータは日差しのエネルギーを葉っぱに溜めながら、ベイリーフの身体につるのムチで巻き付いた。

今度は首ではなく、胴体に。特訓のときに、タケシに相手のポケモンをよく見るように言われた。ベイリーフは首だったら簡単に動く。しかし胴体なら、巻き付いたものを引き離せない。

「しまっ――」
「ソーラービーム!!」

至近距離からソーラービームが放たれる。チコリータは、よろけたベイリーフにすかさずつるのムチで足を引っ掛けて転ばせると、最後は葉っぱカッターでとどめを刺した。

「ベイリーフ、戦闘不能!」

倒れたベイリーフを前に、ミズカとチコリータは顔を見合わせる。次第に笑顔になっていくと、どちらからともなく駆け寄り、抱きしめ合った。

「やったー!! 勝ったー!!」

初めてサトシとの勝負で勝った。ミズカは喜びでいっぱいになる。チコリータもチコリータでも勝てることを知り、嬉しさと安心でいっぱいだ。

そこに、ベイリーフをお礼を言ってボールに戻したサトシがこちらに来た。

「楽しかったぜ!」
「私も!」

お互いに握手し合った。ミズカはいつまでもいつまでもサトシに勝った喜びを噛み締めていた。

その後、ミズカは少しずつ勝ち星を増やしていき、スランプを抜けることができたのだった。


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