7章 チコリータはチコリータ

「お姉ちゃん」
「ん?」
「大昔に会ったことない?」

これには、ミズカも意味がわからず首を傾げてしまった。エーフィを見ても小首を傾げている。しかし、否定するのもどうかと思った。しばらく考えるとやがて口を開く。

「ヒナちゃんが、そう思うなら、会ったことあるかもね」

ニコッと笑うミズカに、ヒナも自然とつられて笑った。交番に着くと、ちょうどヒナの両親が届けを出している最中だった。

「ママ! パパ!!」
「貴女、どこ行ってたのよ」 
「心配したんだからな!」

ヒナは両親の胸に飛び込む。ミズカはホッとしながら、それを見守った。

「あのね。お姉ちゃんが助けてくれた」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、無事に会えて良かったです。それじゃ、あたしはこれで」

にこりと笑って、ミズカは頭を下げた。そして、最後にヒナにクッキーを渡して、自分はサトシたちを探すことにした。

「この町にはもういないのかなぁ」

公園のベンチに座りながら、ミズカは首を傾げる。自分も迷子になった気分だ。甘えたくなったのか、チコリータが膝に乗ってきた。それを優しく撫でる。

「サトシならどっかでバトルしてそうなんだけど。バトルしてるトレーナー見てもいないし、どこ行ったんだろうね?」

エーフィを見れば、彼女は小首を傾げる。エーフィだって心当たりはない。たまには、会わなくても良いか。そんな風に思っていると、前からすごい勢いで走ってくる何かを見つける。

首を傾げていると、そのまま目の前に突っ込んできた。ピチューとチコリータがミズカから離れた瞬間、突っ込んできたものがミズカの顔面に当たる。

「痛っ!! え、なに!??」

顔面に強い痛みを感じて、目に涙が滲む。

「すみませーん!!」

向こうから、声が聞こえた。キョロキョロすると、ベンチの前でメリープが転がっている。顔をあげると、飼い主らしき人が向かってきた。

長髪にベレー帽を被って、スケッチブックを持っている12歳前後の少女だった。

「大丈夫ですか」
「あ、うん……。なんか身体丈夫に出来てるみたいだから……。あ、あなたのメリープは?」

メリープを見ると、起き上がってピンピンしていた。そして、メリープがピョンとベンチに乗り、ミズカにすり寄ってくる。

それを見て、ベレー帽の少女は目を見開いた。

「え、すごっ」
「すごい??」

ベレー帽の少女の言葉によくわからず目をパチクリさせる。少女はメリープを指した。

「私のメリープ、人見知り激しいんですけど、貴女は大丈夫みたい」
「え? そうなの?」
「メェ~」

メリープは柔らかく笑う。

「……あ、もしよかったら隣どうぞ」
「ありがとう」

ミズカに促され、ベレー帽の少女はメリープを持ち上げてベンチに座った。
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