6章 イーブイ進化

「サトシ! ピカチュウを渡しちゃダメだよ! 渡したら、こいつらの思うつぼなんだから!」
「……どうすりゃいいんだ……?」

サトシもそれはよくわかっていたが、いつもと違う展開に戸惑っていた。いつもならピカチュウの10万ボルトで飛ばせばいいが、今回はそれをやってしまっては、ミズカまで巻き込まれる。

「ブイ!」

サトシ達が考えていると、イーブイがロケット団の前に出てきた。

「ブイブイ!」
「あ~ら、相手して欲しいの?」
「ブイ!!」
「いいわよ。やってやろうじゃない! 行けーアーボック!」

サトシ達ばかりに頼ってばかりいられない。ミズカは自分が助ける。そう思って、イーブイがバトルを買って出た。サトシ達はイーブイの気持ちを汲み取り、見守ることにした。

「アーボック! 毒針!」
「イーブイ! 避けて!」
「ブイ!」

ミズカは、イーブイがやるならと指示を出す。しかし、コジロウはミズカの口を押さえて指示を出せなくさせた。

「ん!」

ミズカは抵抗するが大人の力には勝てなかった。仕方なく諦める。これでイーブイはミズカの指示なしに動くしかなくなった。ミズカはイーブイを心配そうに見つめる。

「アーボック! 巻きつく攻撃!」
「シャー!」
「ブイ!」

イーブイは巻き付くをかわし、電光石火をした。

「アーボック、かわして毒針!」
「シャー!」

アーボックはあっさり電光石火をかわし、毒針を繰り出す。イーブイはまともにその攻撃をくらってしまった。

「ブ……」
  
いつものバトルのように行かない。ミズカの指示がないのもあるが、それよりも焦りがあった。

その後も、イーブイはうまくリズムが取れず、何度も何度も攻撃される。ミズカは、そんなイーブイを見てられなかった。が、自分を助けようとしてくれているのに見ないわけにはいかない。ボロボロになったイーブイは、千鳥足になっていた。

「あ~ら、もう終わり?」

ムサシは余裕そうにイーブイを見下ろした。イーブイは睨み付ける。

「ピカチュウ。イーブイを助けるんだ!」

サトシもとうとう見てられず、ピカチュウにそう言う。サトシに言われた通りにピカチュウが出てこようとするが、

「ブイブイ!!」

とイーブイが叫ぶ。ピカチュウはイーブイの必死さに怯んだ。まだ一人で戦うと言っている。ミズカは自分が助けると言っている。

イーブイはミズカを見た。こういう日が来るかもしれない。イーブイは、だからミズカといることにしていた。それはこんな日だろうが、今日ではない。こんなところで負けるわけにはいかない。
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