5章 秘密

「え、あ……」

周りもやっと正気を取り戻す。

「そうだぜ! ここには当たって怪我人出たらどうするんだ!」

サトシが声を上げると、他の利用者もあれこれと言い始めた。少年たちはミズカだけだったら、あるいは無視をしていたかもしれないが、ここには老若男女問わずいる。到底、自分たちだけで勝てそうにはない。

それにポケモンを出してバトルしようものなら、次回から出禁は当然だろう。

「おい、何怒られてんだよ」
「いや、それはお前が……」

最後には悪さを擦り付け合う始末。罰が悪くなった彼らはいそいそと出て行った。

その頃には、周りの利用者も日常を取り戻していた。卓球はまた楽しむ場に戻る。ミズカとサトシも利用者に倣って、ラケットを持つ。二試合目を開始しようとすると、隣の卓球台を使用しているお婆さんとその孫なのか5歳くらいの男の子がこちらに来た。

「あの。ありがとうございます。孫に当たったらどうしようかと心配していました」
「あ、いいえ……。あたしは友達に当たりそうだったので、言っただけなので……」

まさかお礼を言われると思っていなかった。ミズカは苦笑する。

「お姉ちゃん達、卓球して!」

男の子が尊敬する眼差しで二人に言う。サトシとミズカは顔を見合わせると、口角を上げて頷いた。


「面白かったー!!」
「ミズカってキレるとカスミより怖いな」
「え? そう??」

そんな会話をしながら、ポケモンセンターに入ると、すでにカスミとタケシが待っていた。

「二人とも一緒だったのか」
「こっちに来たら、ポケモンバトルしてるサトシに会ったんだよね」

ミズカが、カスミとタケシに会うのは今日初めてだった。ジョーイから預けたポケモンたちを受け取る。

「今までバトルしてたわけじゃないの?」
「うん。卓球やってた」
「卓球か。たしか、この町にはスポーツセンターがあったな」

タケシが建物を見たらしく、思い出したように言う。

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