5章 秘密

「急に食べられなくなってね」
「なんかあった?」
「なんでもないよ」

シゲルが小さく口角を上げて首を横に振る。そんなシゲルにミズカ達は顔を見合わせた。

翌朝になって、サトシがシゲルとバトルしようと飛び起きると、もうシゲルの姿はなかった。ジョーイがいうには朝一番に出て行ったらしい。

「あ~あ、バトルしたかったのにな!」
「あんたと違って色々と、忙しいのよ」

カスミが余計な事を言う。そのせいでまた二人はケンカになった。

ミズカは二人の喧嘩を呆れた表情で見る。結局、シゲルが何故自分に対して顔をしかめたかわからなかったが、自分にそんなに良い印象がないのはわかった。

昨日は食事に誘って失敗だったかもしれないとも思う。朝だって早く出たのは自分のせいかもしれない。

それでも、シゲルが自分のことをもし嫌っていたとしても、ああやって返答して誘いに頷いてくれるのは大人だな、と思った。アニメではわからない一面。アニメではあまり興味がなかったが、シゲルに興味が湧いた。

「じゃ、あたしはもとの世界へ戻るね」

ミズカは、そんなことを思いつつ、帰って行った。

昔、自分がシゲルと会ったことも知らずに……。


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