5章 秘密

「ふーん、ただの気のせいじゃないの?」
「違うよ。サトシに聞いてみればわかる!」

ミズカに言われて、カスミはサトシに聞いてみた。サトシはカートに食料を積みながら、さっきの出来事を思い出す。

「あぁ、たしかにシゲルの様子おかしかったぜ?」
「そう……」
「まあ、そこまで気にする事はないと思うぜ? もしかしたら、別のこと考えてたかもしれないしさ」
「そうだね」

サトシに気にするなと言われて、ミズカは頷いたのだが、やっぱり気になった。ポケモンセンターに戻っても、まだ考えていた。何故か引っ掛かる。

「まだ考えてるの!?」
「え? うん……」
「どうしたのよ?」
「なんでもない。なんか、お腹空いてきちゃった」

引っ掛かるという理由だけ述べてもカスミには伝わらない。オーキドの孫だから何か知っているのかもと思ったのだが、果たしてわざわざ自分の話をする必要があるのかとも思う。

アニメでは知らないシゲルの顔。彼が何を考えたのか、自分に対してどう思ったのか、そればかりが気になった。

日が暮れ、一段落すると、シゲルは祖父に電話をした。

「それじゃ、やっぱりそうなんですね……?」
「そうじゃ。まだ言っておらんのじゃがな」
「わかりました。僕も言わないでおきます」
「頼んじゃぞ!」

シゲルは受話器を置いて、ため息をついた。

――まさか、本当だったとわね……。

暗くなったテレビ電話の画面を見つめる。シゲルはミズカがこの世界に来ている理由を知っている一人でもあった。だから、オーキドが口止めしたのだ。

シゲルは、サトシと旅をしているとは夢にも思っていなかった。サトシの隣にいる黒髪の女の子と、そばにいるイーブイを見て、内心気が気ではなかった。

まさかと思って名前を聞いたら、シゲルの知っている彼女であった。シゲルが一番と言っても過言でないくらい、会いたくない人物だった。

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