最終章 別れのとき
「サトシ、楽しいね!」
「ああ、俺も」
「あたし、バトルはサトシとしているときが一番楽しいよ。今もバトルしてて、そう思う」
ニコリと笑うミズカに、サトシは目を見開く。サトシにとって、それは最高の褒め言葉だった。瞳が揺れる。サトシは自分を心の中で叱咤した。
ミズカは何も変わってないじゃないか。
今までサトシはミズカが辛い話をしていても、だったらこの世界では楽しんでほしいと思っていた。少しでも前向きになって帰ってくれればいいと思っていた。
これは過去の話?
いや、違う。今だってそう思ってる。帰るときに、記憶がなくなっても、前向きに過ごせますようにと。それは兄妹だからとか、家族だからとかそんなものは関係ない。
出会った先にミズカがいて、ミズカと共に過ごした時間があったから、そう思うのだ。自分でミズカを向こうの世界へ迎えに行ったときに言っていた。ミズカといて楽しいのだと。
それは記憶を思い出したって同じじゃないか。だから今、別れが惜しい。さよならなんて簡単にしたくないと思っている。
ミズカがどう思っているかわからない?
こうやってちゃんと伝えてくれている。
怖がっているのは俺だ。俺がどう思っているかだ。
バトルを通していればミズカの気持ちは自然に伝わってくる。ここで10万ボルト……。いや、ボルテッカーのように最高に痺れるバトルをして終わらせてやる。
サトシは帽子を被り直した。
「ピカチュウ、俺達も見せてやろうぜ!」
「ピカピカ!」
サトシの指示にピカチュウの口角が上がる。サトシが元に戻った。ピカチュウは肌で感じる。
「エーフィ、あたし達ももう一度いくよ」
「フィフィ!」
サトシとピカチュウに応えるように、ミズカもアイアンテールを指示した。エーフィもやる気に満ちた表情だ。
二人共、アイアンテールで決めるつもりだ。お互いに向かい合っている。
「どっちが勝つんだろう……」
マサトは、真剣な眼差しで二匹を見た。これが最後。絶対に見逃せない。
「アイアンテール!!」
二人が同時に言うと、二匹も同時に走り出した。
互いに尻尾は鋼のように硬くして、攻撃を繰り出す。アイアンテールはお互いに相手の顔にヒットさせた。アイアンテールの打ち合いをして、最後にスパッと一撃を決める。まるで、侍の茶番劇のような一瞬。
二匹は地面につくと、睨み合う。……同時に倒れた。
「エーフィ!」
「ピカチュウ!」
決着がつかなかった。引き分けで終わった。
ミズカは急に物足りなさを感じた。別に勝ちたかったわけでも、引き分けで悔しいわけでもない。もう仲間にも会えない、ポケモン達にも会えない。そう思うと、胸にぽっかり穴が空いたみたいだった。
「ああ、俺も」
「あたし、バトルはサトシとしているときが一番楽しいよ。今もバトルしてて、そう思う」
ニコリと笑うミズカに、サトシは目を見開く。サトシにとって、それは最高の褒め言葉だった。瞳が揺れる。サトシは自分を心の中で叱咤した。
ミズカは何も変わってないじゃないか。
今までサトシはミズカが辛い話をしていても、だったらこの世界では楽しんでほしいと思っていた。少しでも前向きになって帰ってくれればいいと思っていた。
これは過去の話?
いや、違う。今だってそう思ってる。帰るときに、記憶がなくなっても、前向きに過ごせますようにと。それは兄妹だからとか、家族だからとかそんなものは関係ない。
出会った先にミズカがいて、ミズカと共に過ごした時間があったから、そう思うのだ。自分でミズカを向こうの世界へ迎えに行ったときに言っていた。ミズカといて楽しいのだと。
それは記憶を思い出したって同じじゃないか。だから今、別れが惜しい。さよならなんて簡単にしたくないと思っている。
ミズカがどう思っているかわからない?
こうやってちゃんと伝えてくれている。
怖がっているのは俺だ。俺がどう思っているかだ。
バトルを通していればミズカの気持ちは自然に伝わってくる。ここで10万ボルト……。いや、ボルテッカーのように最高に痺れるバトルをして終わらせてやる。
サトシは帽子を被り直した。
「ピカチュウ、俺達も見せてやろうぜ!」
「ピカピカ!」
サトシの指示にピカチュウの口角が上がる。サトシが元に戻った。ピカチュウは肌で感じる。
「エーフィ、あたし達ももう一度いくよ」
「フィフィ!」
サトシとピカチュウに応えるように、ミズカもアイアンテールを指示した。エーフィもやる気に満ちた表情だ。
二人共、アイアンテールで決めるつもりだ。お互いに向かい合っている。
「どっちが勝つんだろう……」
マサトは、真剣な眼差しで二匹を見た。これが最後。絶対に見逃せない。
「アイアンテール!!」
二人が同時に言うと、二匹も同時に走り出した。
互いに尻尾は鋼のように硬くして、攻撃を繰り出す。アイアンテールはお互いに相手の顔にヒットさせた。アイアンテールの打ち合いをして、最後にスパッと一撃を決める。まるで、侍の茶番劇のような一瞬。
二匹は地面につくと、睨み合う。……同時に倒れた。
「エーフィ!」
「ピカチュウ!」
決着がつかなかった。引き分けで終わった。
ミズカは急に物足りなさを感じた。別に勝ちたかったわけでも、引き分けで悔しいわけでもない。もう仲間にも会えない、ポケモン達にも会えない。そう思うと、胸にぽっかり穴が空いたみたいだった。