最終章 別れのとき

明るい日が差す。夜はとっくに明けていた。ずっとずっと話すことは尽きず、ミズカ達は談笑を続けていた。

「皆、ご飯出来たって」

部屋に入って来たのはケンジだった。ケンジは少し前に朝食を作りに行った。しかし、ご飯が出来たとはどういうことなのか。ケンジが作ったわけではないのだろうか。首を傾げるが、考えても仕方ないと立ち上がる。

案内されたのはオーキド研究所の庭。美味しそうなご飯がテーブルに並べられていた。

「おはよう。皆たくさん食べてね」

女の人の声がし、ミズカ達は驚いた。そこに立っていたのはサトシの母だったのだ。

「ママ!?」
「サトシのママさん!?」

一番驚いたのはサトシとミズカだった。

「ミズカちゃん、お久しぶりね」
「はい……。でもどうして……」
「言ったじゃない。この世界では、私はあなたの母よって。私にもお見送りさせて?」

ハナコの気持ちに触れ、ミズカの瞳が揺れた。微笑む彼女は、屈託ない。本当の母のようだった。ミズカはそれが嬉しくて口角を上げて頷いた。胸が熱い。

「さあ、たくさん用意したのよ。好きなだけ食べて」
「いただきます!」

ミズカ達は席に座り、朝食を食べ始めた。ハナコの手料理が身に染みる。色々なパンに、スクランブルエッグに、ソーセージにサラダ。それにデザートにはヨーグルト。まるでホテルのようなメニューだった。

クロワッサンに手を伸ばして食べていると、ポケモンフーズを早々に食べ終えたエーフィがミズカの足を突いた。

「フィ、フィ!」
「エーフィ、どうしたの?」

首を傾げると、エーフィはミズカの肩に乗る。そして、ポケモンフーズを食べているピカチュウを見た。ピカチュウはエーフィの視線に気づき、こちらに寄ってくる。

ミズカは、エーフィとピカチュウの様子にピンと閃く。

「サトシ」
「何だ?」

サトシを呼ぶと、彼は食べている手を止めてミズカを見た。

「この後、バトルやらない? エーフィ、ピカチュウとバトルしたいみたいなの」

エーフィは、わかってもらって嬉しいのか、ニコッと笑って頷いた。

「ピカピ、ピカチュウ!」

それを聞いたピカチュウも勢いよく、サトシの肩に乗る。ピカチュウもその気らしい。

ミズカとサトシは二匹に感謝する。どうしたら良いかわからなかった。しかし、そういえば兄妹と知る前は沢山バトルをしていたことを思い出す。

「わかった。バトルしようぜ!」

久しぶりに、ミズカとサトシは目が合った。仲間だったときの感覚が少しずつ戻ってきた。朝食を食べ終え、ミズカとサトシはバトルの位置についていた。
9/19ページ
スキ