最終章 別れのとき

「やだよ、カスミアレンジするじゃん!」

夕飯前、ミズカは嫌そうな顔をした。返ってくると、カスミが自分も一緒に作りたいと言い始めたのだ。しかし、ミズカはカスミの壊滅的な料理センスのなさを知っている。昔にオムライスを作ったときにはアレンジをされて参ったことがあった。

そのときにミズカはオムライスのレシピと一緒に『勝手にアレンジしないこと!!』と書いてあるメモを渡している。サトシがカスミの後ろで吹き出す。カスミはサトシを睨みつけた。

「はいはーい! 私も作りたい!」
「あたしも!」

ハルカとヒカリが手を挙げる。ミズカは目を見張った。

「料理できるの?」
「ぜーんぜん」

声を揃えて首を横に振る二人にミズカは怪訝な顔を見せる。

「いや、あたしはタケシと作りたーー」
「はいはーい。行くわよー」

カスミがミズカの腕を引っ張る。「タケシー!」と助けを求めたが、タケシはご愁傷さまとでもいうのか手を合わせる。ミズカは女子たちに引っ張られていった。

台所は好きに使っていいと言われている。台所に行くと、チコリータとプラスル、マイナンがいた。

「もしかして手伝ってくれるの!?」
「プラ!!」

プラスルが元気よく手を挙げる。ミズカは3匹の頭を撫でる。

「私達と反応違うかも!」
「なんで一緒になると思ってんの……」

怒ったハルカに呆れつつ、ミズカは材料を広げる。作るものはオムライスとポトフ。ミズカは腕を組む。このメンバーで作れる気はしない。

「一応聞くけど皮向ける人ー?」

聞いてみても手は挙がらない。ミズカは悟ったような笑顔を見せた。ピーラーは果たして研究所に存在するのだろうか。当たりを見回していると、ケンジが入ってきた。

「何か見つからない道具なかったらと思って」
「ありがとう! ピーラーある?」
「あるよ」

ケンジは頷くと、適当な引き出しからピーラーを出してきた。

「研究所なのに色々道具あるんだね」
「僕が来る前はなかったんだけど、博士があまりにも無頓着すぎるから僕が作るようになって……。そしたら、それを知ったサトシのママがいらない道具くれたんだよ」
「ああ、なるほど」

確か、オーキドは研究道具でカップ麺を作るくらい無頓着だ。口に入れられれば何でもいいのだろうが、それをケンジが見兼ねたというわけだ。

「そしたら、ヒカリとハルカはピーラーで人参とじゃがいもの皮を向いて」
「使い方は僕が教えるよ」

ケンジが買って出てくれる。ミズカはそのままお願いした。

「そしたら、カスミはキャベツ切るよ」

ポトフに入れるキャベツをカスミは見つめる。どう切ればいいか分からず固まっている。カスミは包丁を下から握ると振り上げた。

「待った待った!!」

ミズカが慌てて止める。

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