「良いのかい？　たくさん話をしたかったんだろう？」

シゲルが、サトシの様子に気づきながらも聞いた。彼は「まあな」と、少し寂しげに笑った。シゲルはわざわざ帽子の下の表情を見ることをしなかった。

「サトシー！　ポケモンセンターに戻るわよ！」
「かもかも。安心したら、お腹空いたわ」

カスミとハルカの声が聞こえる。サトシとシゲルは、顔を見合わせると笑い、仲間の所へ歩いた。戦いは終わった。

また、バカ騒ぎをして盛り上がる事の出来る旅が始まるのがサトシは楽しみだった。ミズカの表情が戻った。ミズカとの関係だってもう大丈夫だ。なんだったら、ミズカの弟にも会いたいくらいだった。

長い夜はすっかり明けた。

誰もミズカとの別れがすぐ近い事に気づいてなどいなかった。