32章 最後の戦い

「もう一時間だ。残念だな。出てこい、フシギバナ」
「バーナー」

ノリタカは、腕時計で時間を確認するとフシギバナを出した。サトシ達は動こうにも、コダックでまた金縛りにあっている。

「頼む、父さん! もうやめてくれ!」
「まだ可能性はある!」

サトシとシゲルが叫ぶ。しかし、ノリタカが聞く耳持つことはなかった。

「ソーラービームだ」 

ソーラービームなんて、当てられたらミズカは無事で済まない。それにノリタカのポケモンが強いことは、先程の戦いでわかっている。間違いなく止めを刺す攻撃になる。

フシギバナは光を溜めると、容赦なくミズカにソーラービームを放った。

「ミズカー!!」

ソーラービームは爆発を起こした。その瞬間にサトシ達も金縛りが解ける。サトシ達は見ていられず、俯いてしまった。ミズカが死んでしまった。

こんなことまでする必要ないじゃないか。サトシはギュッと拳を握る。

「勝手に人を殺さないでよ」

驚いて顔を上げる。先程ミズカが攻撃を受けた場所を見たがミズカはいない。声は後ろからした。パッと後ろを振り返る。

そこには、ピンピンしたミズカが立っていた。驚きのあまり口をパクパクするが、何も声に出せない。

「フィ~」
「ピチュ~」

ミズカの胸に飛び込んできたのはエーフィとピチューだった。バランスを崩して地面に尻餅をつく。

どうやら、ギリギリのところで間に合ったらしかった。サーナイトに力を借りて、テレポートしてもらったのだ。

「ピチュピ!」
「フィフィ!」

二匹は泣いていた。それを見て優しく抱き返す。チルタリスが口角を上げる。ミズカはにこりと頷いた。

ちょっと二匹が重いと感じつつ、ゆっくり立ち上がる。

「……何、このシーンとした空気は」

ミズカはため息をついた。奇跡の復活をしたのに空気が重たい。

「……本当に、ミズカ……だよな?」

やっとの思いで口を開いたのはサトシだった。疑ってるつもりはないが、こういう聞き方になってしまった。

ミズカはサトシを見て、にやりと笑った。腰に手を当てる。

「……当たり前じゃん! 妹の顔をお忘れになりましたか? お兄さ……ま」

ふざけていると、頭を思い切りカスミに殴られた。

「ふざけてる場合じゃないでしょ!」

カスミはツッコむと、そのままミズカを抱きしめた。ミズカもカスミを抱き返す。背中を擦った。そして、カスミの奥に見えるみんなを見た。

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