32章 最後の戦い
「……そっか。あたしが邪魔だったんだ」
ミズカは俯いた。少しくらい期待していたのに。彼はミズカの期待には応えてくれなかった。顔を歪める。邪魔だった。その事実が辛くミズカに突き刺さった。
不意に汗ばんだ手はナイフを滑らせてしまった。地面に落ちていた小石に当たり、キーンと嫌な音を立てた。思わず、耳を塞ぐ。
「どうした? 仲間のために死ぬのは、嫌か?」
楽しそうにノリタカは言った。
仲間のために死ぬのは嫌かどうかで言えば、少し前のミズカは大きく首を横に振った。
しかし、刺された後に、仲間たちは、生きていて良かった、無事で良かったという言葉を掛けてきた。出会えて良かったとも言われた。それがミズカの身に沁みた。
自分で自分をいかに大切にしていなかったか。仲間の言動で思い知らされた。だから、服を汚したくない。仲間に心配や泣き顔をさせたくない。仲間のために死にたくない。
グルグルと頭の中で考える。では、どうしたらノリタカを説得できるのか。サトシまで危害が及んでしまった。仲間たちへの攻撃は、きっと躊躇がない。
ミズカはナイフに震えた手を伸ばした。記憶が蘇って、直視できない。目をつぶった。
「もうやめろよ! やめてくれ!」
サトシの声にハッと目を開けた。地面にはナイフがない。無理矢理に身体を起こしたサトシが握っていた。
「……いっ」
サトシは痛さで膝をつく。
「さ、サトシ!?」
「もうやめてくれよ……。例え、ぐちゃぐちゃな関係でも俺達は家族だろ……」
「何を勘違いしている。事実上、俺とミズカとは、もう家族ではない」
ノリタカの言葉にサトシはミズカを見た。彼女は目を逸らす。サトシは深呼吸をすると、攻撃されたところを手で抑えながら再び立ち上がった。そして、ミズカの一歩前を出る。
「でも、ミズカはお前のこと……お父さんって呼んでるぜ? それって、まだ家族を続けたいってことじゃないのか? 父さんだって違うのかよ」
「俺は違う」
サトシの訴えにノリタカは眉間にシワを寄せた。そして、モンスターボールを握る。
「……やむを得ん。出てこい、ダークライ」
「だ……ダークライ!?」
ミズカは、驚いた表情でダークライを見た。黒い身体に、蒼い目。まさしくダークライだった。
「知ってるのか?」
「うん、幻のポケモンだよ。たしか、特性が……」
ごくりと息を飲んだ。
「ダークライ、ナイトメアだ」
ダークライの特性について話す前に、ノリタカはサトシを狙って指示した。ダークライの手から禍々しい黒い玉の様なものが出てきた。それがサトシに向かって放たれる。
「サトシ!」
ミズカは、サトシを押し退けた。代わりに自分が当たる。サトシにこれ以上怪我をさせたくない。その一心だった。
ミズカは俯いた。少しくらい期待していたのに。彼はミズカの期待には応えてくれなかった。顔を歪める。邪魔だった。その事実が辛くミズカに突き刺さった。
不意に汗ばんだ手はナイフを滑らせてしまった。地面に落ちていた小石に当たり、キーンと嫌な音を立てた。思わず、耳を塞ぐ。
「どうした? 仲間のために死ぬのは、嫌か?」
楽しそうにノリタカは言った。
仲間のために死ぬのは嫌かどうかで言えば、少し前のミズカは大きく首を横に振った。
しかし、刺された後に、仲間たちは、生きていて良かった、無事で良かったという言葉を掛けてきた。出会えて良かったとも言われた。それがミズカの身に沁みた。
自分で自分をいかに大切にしていなかったか。仲間の言動で思い知らされた。だから、服を汚したくない。仲間に心配や泣き顔をさせたくない。仲間のために死にたくない。
グルグルと頭の中で考える。では、どうしたらノリタカを説得できるのか。サトシまで危害が及んでしまった。仲間たちへの攻撃は、きっと躊躇がない。
ミズカはナイフに震えた手を伸ばした。記憶が蘇って、直視できない。目をつぶった。
「もうやめろよ! やめてくれ!」
サトシの声にハッと目を開けた。地面にはナイフがない。無理矢理に身体を起こしたサトシが握っていた。
「……いっ」
サトシは痛さで膝をつく。
「さ、サトシ!?」
「もうやめてくれよ……。例え、ぐちゃぐちゃな関係でも俺達は家族だろ……」
「何を勘違いしている。事実上、俺とミズカとは、もう家族ではない」
ノリタカの言葉にサトシはミズカを見た。彼女は目を逸らす。サトシは深呼吸をすると、攻撃されたところを手で抑えながら再び立ち上がった。そして、ミズカの一歩前を出る。
「でも、ミズカはお前のこと……お父さんって呼んでるぜ? それって、まだ家族を続けたいってことじゃないのか? 父さんだって違うのかよ」
「俺は違う」
サトシの訴えにノリタカは眉間にシワを寄せた。そして、モンスターボールを握る。
「……やむを得ん。出てこい、ダークライ」
「だ……ダークライ!?」
ミズカは、驚いた表情でダークライを見た。黒い身体に、蒼い目。まさしくダークライだった。
「知ってるのか?」
「うん、幻のポケモンだよ。たしか、特性が……」
ごくりと息を飲んだ。
「ダークライ、ナイトメアだ」
ダークライの特性について話す前に、ノリタカはサトシを狙って指示した。ダークライの手から禍々しい黒い玉の様なものが出てきた。それがサトシに向かって放たれる。
「サトシ!」
ミズカは、サトシを押し退けた。代わりに自分が当たる。サトシにこれ以上怪我をさせたくない。その一心だった。