32章 最後の戦い
その少し前に遡る。
サトシは冷や汗を流していた。ピカチュウ達が食堂で戯れて固まっている間に、ミズカの様子を見に行くつもりだった。しかし、誰もいない廊下にいきなりドアが現れたと思ったら、そこに引き摺り込まれたのだ。
だから、サトシは今、ポケモン達がそばにいない。対抗するには素手ぐらいしかない。サトシは怪訝な表情を浮かべ、ノリタカを見た。
「何の用だよ?」
「そんな怒るなよ」
誰のせいで怒ってると思っているのだ。サトシはため息を飲み込んだ。しばしの沈黙。口を開いたのはノリタカだった。
「……俺と手を組まないか」
サトシは「は?」と眉を潜める。モンスターボールからワンリキーとコダックが出てきた。
「あいつが死のうと思わないのは、お前達がいるからだ。お前が裏切ってさえくれれば、簡単に死のうと思えるだろう」
「そんなことするわけないだろ」
「ミズカが辛い思いをしてると言っていたな。両親の離婚から始まって、部活内でのイジメに、不登校……。それから、サトシとの関係もか」
「向こうの世界でのこと知ってんのかよ」
サトシは顔をしかめる。両親のことは、ノリタカが当事者である。ただ、それ以外のことを知っているとは思っていなかった。
「もしこれから、もっと辛いことが待ち受けているなら、楽にさせた方がいいとは思わないか」
「わけわからないこと言うなよ。もっと辛いことは父さんがやってんだろ! 父さんのせいだ! 俺は死んでも父さんの手伝いなんかしない」
睨みつけるサトシにノリタカは後ろを向いた。そして、空を仰ぐ。
「……そうだな。俺のせいだ」
ノリタカは厳しい顔でサトシを見ると、ワンリキーに攻撃の指示を出した。ミズカが食らった技と同じ、空手チョップだ。サトシは思い切り鳩尾に受けた。
薄れゆく意識の中でサトシは、自分のせいだと言うなら、なぜミズカを殺す必要があるのか。そう問いたくて仕方がなかった。身体に力が入らず、彼は意識を失った。
サトシは冷や汗を流していた。ピカチュウ達が食堂で戯れて固まっている間に、ミズカの様子を見に行くつもりだった。しかし、誰もいない廊下にいきなりドアが現れたと思ったら、そこに引き摺り込まれたのだ。
だから、サトシは今、ポケモン達がそばにいない。対抗するには素手ぐらいしかない。サトシは怪訝な表情を浮かべ、ノリタカを見た。
「何の用だよ?」
「そんな怒るなよ」
誰のせいで怒ってると思っているのだ。サトシはため息を飲み込んだ。しばしの沈黙。口を開いたのはノリタカだった。
「……俺と手を組まないか」
サトシは「は?」と眉を潜める。モンスターボールからワンリキーとコダックが出てきた。
「あいつが死のうと思わないのは、お前達がいるからだ。お前が裏切ってさえくれれば、簡単に死のうと思えるだろう」
「そんなことするわけないだろ」
「ミズカが辛い思いをしてると言っていたな。両親の離婚から始まって、部活内でのイジメに、不登校……。それから、サトシとの関係もか」
「向こうの世界でのこと知ってんのかよ」
サトシは顔をしかめる。両親のことは、ノリタカが当事者である。ただ、それ以外のことを知っているとは思っていなかった。
「もしこれから、もっと辛いことが待ち受けているなら、楽にさせた方がいいとは思わないか」
「わけわからないこと言うなよ。もっと辛いことは父さんがやってんだろ! 父さんのせいだ! 俺は死んでも父さんの手伝いなんかしない」
睨みつけるサトシにノリタカは後ろを向いた。そして、空を仰ぐ。
「……そうだな。俺のせいだ」
ノリタカは厳しい顔でサトシを見ると、ワンリキーに攻撃の指示を出した。ミズカが食らった技と同じ、空手チョップだ。サトシは思い切り鳩尾に受けた。
薄れゆく意識の中でサトシは、自分のせいだと言うなら、なぜミズカを殺す必要があるのか。そう問いたくて仕方がなかった。身体に力が入らず、彼は意識を失った。