3章 チコリータ、ゲットだぜ!

夕方、チコリータは気がついた。ゆっくり目を開く。焦点が合わないのか、少しキョロキョロとあたりを見回した後、チコリータはミズカを捉えた。イーブイがベッドに乗り、自分の顔を覗く。

「気がついた?」

チコリータは少しホッとした顔のミズカの胸に飛び込んだ。一緒にいてくれたことが嬉しかった。そんな様子にミズカは目を見開く。チコリータの行動が意外だった。

「チコリータ……」
「チコチコ!」

少しは自分に心を開いてくれただろうか。ミズカに自然と笑みがこぼれた。

「チコリータ、安静にしててね」
「チッコ!」

元気になったチコリータを見て、ミズカは口角を上げた。


翌日、ジョーイの言う通り、チコリータはほとんど回復していた。

「12時には帰ってきてね」

ジョーイの言葉に、ミズカは「はい!」と大きく頷く。このままバイバイは名残惜しくなってしまったミズカは、チコリータを誘って外へ出かけないかと提案した。

チコリータは、ポケモンセンターに連れてきたお礼なのか、頷いてくれた。チコリータが病み上がりのこともあり、ジョーイからは門限を設けられた。少しの時間で良い。もうミズカはチコリータとやることを決めていた。

「いってきます」 

時計を持っていないので、ジョーイから時計を借りるとポケモンセンターを後にした。

「さて、ちょっと森に入ろうか」

ミズカは2匹を連れて、森に入る。奥まで行くつもりはないが、目的があった。少し歩くと、ジョーイに聞いたとおり、木の実が沢山成っていた。ミズカはいくつかもぎ取ると、チコリータの前に見せる。

「タケシから教えてもらったんだけど……。これが疲れたときに食べるといいやつ。で、こっちが毒状態……で伝わるのかな。えっと、スピアーとかに刺された時に食べるやつ。あとね、これは身体がビリビリしたときに良いらしいよ」

ミズカは野生に返ったときにチコリータが困らないように、木の実について教えてあげることにした。木の実を見て、キラキラ輝かせると、チコリータはイーブイと分けて食べ始める。

「あと、怪我しちゃったときは、まず泥を落とすんだって。流れがゆっくりの川とか、湖を探しておくといいと思う。ここに大きな葉っぱがあるから、水は掬えるよね」
「チコ?」
「あと、ひとりじゃ大変だからポケモンの友達探しなね」

人間と言えなかったところに悔しさを感じる。チコリータはわかっているのかわかっていないのか。よくわからない顔で首を傾げている。

結局、自分よがりになっている気がして、ミズカは複雑な気持ちになる。

イーブイはミズカを見て、不安そうにした。この表情を知っている。ミズカの相手を思ってなっている複雑な表情を見て、イーブイはチコリータをとんとんと突く。
15/20ページ
スキ