31章 存在

「この間も言ったでしょ? 皆、心配してるって……。ハルカも心配して、オーキド博士に連絡したのよ」
「……そうだね」

ミズカは、ため息をついた。心配かけたくないと思うほど、心配をかける自分が嫌だった。

「ごめん……」
「謝らなくて良いわ。ミズカは、何をしたのかも?」
「それは……」

ハルカに聞かれ、思わず言葉が詰まった。自分は何をしたのか、よくわからない。

「あたし……、なんで謝ってるんだろう……?」

首を傾げる。どう考えても何もしていない。しかし、一つだけあった。

「でも……、あたしの行動で皆を巻き込んでる。だから……、ごめん」

ミズカがそう言うと、三人の表情は穏やかになった。そんな表情をされ、ミズカは戸惑う。

「良かった……」
「かもかも……」
「また、生まれちゃいけなかったなんて言われたら困ってたわ……」

カスミ達はニコッと笑いながら、ミズカを見た。

「え……?」
「ミズカが、そう言って良かったと思ったの。正直一番心配だったのは、そのことかも」

ハルカが言うと、ミズカは小さく口角をあげた。タケシにも同じようなことを言われたのを思い出す。少しは彼女たちの心配もなくなったようだ。

「それに無鉄砲な行動に振り回されるのは、もう慣れてるわよ」
「そりゃどうも」

カスミが少し呆れた顔で言うと、ミズカは苦笑して言った。

「それに、無鉄砲はもう一人いるから大丈夫!」

果たして、何が大丈夫なのだろうか。ミズカはため息をついた。無論、もう一人はサトシのことである。

「無鉄砲と言えばさっきだよね……。もう夜になるのに……」

サトシが出て行った窓の外を見ると、太陽は沈み、暗くなりつつあった。

ノリタカは、サトシに何もしないだろう。それにシゲルも後を追って行ってくれた。そう思っていても、やはり心配になる。

「大丈夫。もう帰って来たみたいよ」

ヒカリが耳を澄ませる。部屋の外から二、三人ほどの足音がした。そして、彼らのいる部屋の前で止まり、ドアが開く。ミズカは「良かった」と息を撫で下ろした。
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