31章 存在

「これ以上話していても時間の無駄だな。ワンリキー、ミズカに空手チョップだ」

ワンリキーは頷き、ミズカの腹を目掛けて、空手チョップをした。力を入れていて吹っ飛ぶことはなかったが、顔を歪めてその場に座り込む。

「ミズカ!」
「もう用はない。傷が治るまで楽しみにしているぞ」

ノリタカはコダック達をボールに戻すと窓から出て行った。 堪らずサトシは、窓から部屋を飛び出して、ピカチュウとノリタカを追いかけて行く。

「ちょっと、サトシ!」

カスミは呼ぶが、声は届かなかった。

「もう……、何があるかわからないのに……」
「僕が追いかけるよ。ミズカを頼む」

ハルカが心配そうに窓の外を見る。シゲルは冷静だった。ワンリキーはミズカの急所をついていない。ノリタカの話から読み取れる。だったら、逆にサトシが危ない。

サトシに何かあったら、今度こそ、ミズカが自分から死にに行く。シゲルはサトシを追いかけた。

「こっちは、ミズカだな。俺はジョーイさんを呼んで来る」
「わかった。あたし達は、ミズカをベッドに寝かしておくわ」

タケシは、カスミの言葉を聞くと、ジョーイを呼びに行った。

「ミズカ、立てる?」

ミズカは頷いた。喋れないくらい辛く、痛い。息が上手くできない。

「じゃあ、ゆっくり立って」
「あたしも手伝うかも」
「あ、あたしも」

3人はミズカを支えるとベッドに運び寝かせた。

「全く、無鉄砲というか何と言うか……」
「ミズカだから仕方ないかも……」

呆れた表情でカスミとハルカはため息をついた。

「……サトシ、大丈夫かな……」
「ミズカ! 自分を心配しなさいよ!」

ヒカリまで、大きくため息をついた。カスミとハルカは、他人の心配ができるのだから、おそらく致命傷を負っていないだろうと察する。ちょっと安心もした。

「そういえば、エーフィ、久しぶりね。ピチューも」

一息つき、カスミが言った。

「もしかして、この子がダンス団に入ってたピチュー?」

ハルカは、パチンと手を合わせた。エーフィとピチューはニコッと笑った。そんな所で、タケシとジョーイが来た。
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