31章 存在

「ジョーイさん、それ何とかなりませんか?」
「何とか……?」
「はい……。お説教は、受けたくないんですけど……」
「それは無理なお願いね。まあ、ジュンサーのお説教は、一時間くらい掛かると思うから覚悟しておくと良いわよ」

お説教は避けられないらしい。いくら心の中で思っても無理な話だ。ミズカ、三度目のお説教……、決定である。

「ジョーイさん、その時彼女に付き添っていて良いですか?」

その言葉に、ミズカは目をぱちくりさせ、シゲルを見上げた。彼は本気なのだろうか。

「良いわよ」

ジョーイは微笑んで部屋を出て行った。それに続いてタケシも出ていく。

「……シゲル、本気? 一時間、ずっと説教だよ?」
「一時間じゃなくて、お説教を五分に縮めるよ。いや三分かな」

その言い方が妙に懐かしかった。かなり自信ありげな表情だ。

――そう言えばシゲルって、今はそう見えないけど、昔はかなりの女たらしだったっけ……。

ふいに思い出したのは、まだ自分が幼稚園の時の記憶だった。その頃、シゲルはたしか、サトシを『サートシ君』と呼び、かなり馬鹿にしていた覚えがある。

そして、チアガールを何人も連れ、車に乗っていたのを鮮明に覚えている。ようするに、歳上の女性の扱いには慣れているのだ。最も今は、サトシを馬鹿にしたり、チアガールも連れていないが。

「……どうするんだい?」

彼はミズカがアニメを見ているのをわかって言っている。

「お願い……します」
「決まりだね」

説教が早く終わって欲しい。そう思い、了解した。

「なるほどね……。そんな事が……。でも、それで貴方は無茶をしたのかしら?」

ジュンサーの事情聴取が始まった。

ご飯を食べた後、タイミングが良いのか悪いのか、ジュンサーが来た。ミズカは、ベッドの上で体を起こしている。椅子に座ろうにも、怪我が響いて無理だった。
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