31章 存在

「でも、それって凄い勇気だと思う。……はい、包帯取り替えたわよ」
「あ、ありがとうございます」

お礼を言うミズカの肩に、ジョーイは優しく手を置いた。

「貴女は強い心を持っている。今度はそれを自分のために使いなさい。たしかに仲間のために行動することもあるかもしれない。だけど、その解決に自分を犠牲にしていたら駄目よ。我慢するだけじゃ、きっと……、貴方の仲間はショックになるだけだわ。勿論、貴女もね」

我慢……、いつしか聞いた言葉に反応した。二、三ヶ月前に、もとの世界で言われた言葉だ。どうやらミズカは知らず知らず、また我慢をしていたらしい。

「もっと、自分を大切にしなさい。それが今貴女に必要な事よ。貴方の代わりはいないんだから」

彼女はこの言葉の意味の深さを知った。我慢をしないことが自分を大切にすることに繋がる。

「……はい」

ミズカは、静かに返事をした。そして、病院の服を着る。ジョーイはニコッと笑った。

「じゃあ、ご飯にして良いわよ」
「マジですか! やっと食べれる……」

ミズカは嬉しそうに言う。お腹と背中がくっつきそうだった。そんな彼女に苦笑しながらも、ジョーイは食事を渡した。そして、部屋の外で待っている、四人を呼ぶ。

「いただきます!」

ご飯は、お粥だが、美味しそうに口に運んだ。

「ミズカ、よっぽどお腹が減ってたのね……」
「俺も腹減ってきた……」
「サトシはさっき食べただろう……」 

食いっぷりの良いミズカに関心をするヒカリ。腹が減ったと呟くサトシ、それに呆れながらツッコミを入れるタケシ。シゲルはミズカを見て、サトシに似ていると改めて思う。

「食べ終わったら、適当にどこか置いて。私はちょっと仕事があるから……」

返事をしようとミズカは口を開けるが、タケシに先を越された。

「ジョーイさん! 仕事なら自分がお手伝いを……!」
「あ……、そう? それじゃあ、お願いしようかしら」

普段なら、ここでグレッグルの登場だが、ジョーイは了解してしまい、登場しなかった。

「あ、そうそう、ミズカちゃん」
「はい……?」
「ジュンサーが貴方の話を聞きたいと言っていたわ。お説教も兼ねて……」

ジョーイに言われ、ミズカは凍りついた。ジュンサーの説教は、もう二度も体験している。ミズカの気持ちがわかったのか、サトシとタケシ、エーフィとピチューは苦笑した。

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