「あたしが悪い。あたしが皆を傷つけた……」

ミズカはエーフィとピチューを撫でた。傷つける気はなかったのに、彼らまで傷つけてしまった。

「本当に……、ごめん」
「大丈夫！　ミズカが無事だったんだから、それで良いじゃない」

ミズカの不安と後悔が入り交じった表情を見て、ヒカリは言った。何故ミズカが謝る必要があるのかよくわからなかった。悪いのは、仲間を脅しに使ったノリタカだ。確かに、ミズカが倒れているとき、動揺した。腰も抜けた。泣きながら、村へ歩いた。

「ヒカリ……」
「無事で良かった。こうやって話せて、安心してる」

ヒカリは涙を浮かべる。ミズカは、彼女の気持ちに感謝した。思えば、ヒカリが仲間に加わった時には、すでにこの戦いは始まっていた。短期間でこんなことに巻き込んでしまったのに、無事で良かったと言ってくれる彼女に感謝しかない。

でも、胸は痛む。サトシ達がミズカの住む世界に来たとき、追い返すべきだったと思う。一人で勝手に死んでいれば、こんなふうに傷つけることはなかった。

「ミズカ、さっきサトシも言っていただろう？　自分を責めるなと。責めても何にもならないぞ」

タケシの言葉に、ミズカは返事ができずに黙ってしまった。

「皆、お前のせいだと思ってない」
「だけど……。だけど、あたしがここにいなければ……、皆が苦しむ事はなかったじゃん……」

サトシを思い浮かべる。

自分達が異母兄妹と知って、一番悩み、苦しんだだろう。

サトシは昔に会った出来事を思い出せないと言っていた。しかし、昨日だか、今日だかにサトシが二年前の記憶を思い出してしまったのをなんとなく察している。

彼は、ミズカが目を覚ました時、顔は覗かせたが、目を合わそうとはしなかった。複雑な表情は２年前のそれと一緒だった。

サトシは自分と同じでわかりやすい。きっと二年前の感情を思い出し、目を合わせられなかったのだろう。一番傷つけたくなかったのに、一番傷つけてしまっている。自分のせいで。

だったら、最初から自分がいない方が良かった。ポケモン世界に来たこと自体が間違いだった。