31章 存在

身体が痛い、視界に光が差した。

次第にハッキリと見えるようになり、最初に飛び込んで来たのはエーフィにピチューだった。2匹は、お互いに顔を見合わせると笑顔になる。ミズカは状況が掴めていなかった。2匹をボーッと見ている。

「気がついたか?」

次に見えたのは仲間の顔だった。話しかけたのはサトシだ。そんなサトシは複雑そうな表情だった。

「あたし……、生きてる?」

ベッドから起き上がろうとすると、お腹に激痛が走って顔を歪めた。そうだった。自分はナイフで刺されていた。

「無理しないで」

焦った表情でヒカリは、ミズカを再びベッドに寝かせようとする。しかし、ミズカは「平気」と言って、ゆっくりとベッドの上に起きた。

「……ここは?」
「皆で目指していた村のポケモンセンターだよ。昨日急いで倒れている君をここへ連れてきたんだ」

ミズカは天井を見ながら聞くと、シゲルが答えた。

「そっか……。迷惑かけて……ごめん」

ミズカは、ため息をついて謝った。自分が情けない。いっそのこと、死んでしまっていた方が、彼らには迷惑を掛けなかったとさえ思えた。

「自分を……責めるなよ。ミズカはいつもそうじゃないか」

サトシの言葉に、ミズカは俯いた。前にもこんな会話をした。

「だって……」

言葉が詰まる。結局、迷惑を掛けてしまった。サトシを見る。父親が妹を刺したなんて、相当傷つけたに違いない。他の仲間に対しても、ショッキングなところを見せてしまった。

落ち込んでいるミズカに、タケシはマグカップに入った温かいココアを渡した。

「これを飲むと落ち着くぞ」
「あ……、ありがとう」

ミズカはココアを口に運んだ。少し気持ちが和らぐ。肩の力が少しばかり抜けた。生きていた……。それがこんなに安心するものなんて。
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