30章 戦慄の戦い

「まだ、ミズカは助かるかもしれない」

その言葉に、サトシ以外の視線もシゲルに向いてくる。実は、微かだがミズカの指が動いたのをシゲルは確認した。今も、微かに動いている。

「ほ、本当か!」

サトシは驚いた表情で聞く。シゲルは黙って頷いた。それを見て、タケシもハッとしてミズカに駆け寄る。ミズカの脈を測った。

「無理に決まってるだろ」

冷たくノリタカは言い放つ。

「せいぜい頑張るんだな」

鼻で笑い、サトシの手を払い退けると、ノリタカはその場を去って行った。サトシは追い掛けたい気持ちで一杯だったが、今は、ミズカの命が先と思い、グッと堪える。

「どうだい?」
「脈がある。村までもう少しだから、間に合うかもしれない」

シゲルとタケシはお互いに頷く。二人が確認しているのだから間違いない。そこからの二人は妙にしっかりしていた。

「今から、まず止血をする。運ぶのに傷が開くのはまずい。担架を作ってもらえるか?」
「わかった」

タケシの指示にシゲルは頷く。サトシも話は聞いていたようで、ポケモンたちを出した。そのうち、エーフィも起きる。エーフィは最初こそ動揺していたが、タケシにまだ間に合うことを言われて、サトシ達を手伝うことにした。

守れなかった。それが悔しくて仕方ない。ピチューはいまだに動けそうにない。ピカチュウと目が合う。ピカチュウがそばにいてくれる。ここは任せることにした。

なんとか協力して、短時間で担架をつくる。そして、ミズカの傷が開かないように、エーフィのサイコキネシスも手伝いながら担架に乗せる。

それを見て、タケシがヒカリに駆け寄った。

「ヒカリ、動けるか?」

ヒカリは一生懸命に涙を拭き、頷くと、ふらつきながらも立ち上がった。

「ミズカの荷物、持つわ」
「頼む」

こうして、サトシ達はミズカを運び、急いで村へ向かった。
11/11ページ
スキ