30章 戦慄の戦い

「ごめん。でも、自分が傷つくより皆が傷ついた方が嫌だよ。シゲルの気持ちを聞けて嬉しかった。皆に会えて嬉しかった。これからも一緒いたい……。だから……」

ミズカは少し微笑む。

「決着をつけにいく」

仲間と明るく笑顔で笑える未来があると信じ、その表情を崩さず、エーフィを呼んだ。エーフィは何も言わず、静かに催眠術をし、4人と2匹を眠らせた。彼らは、ハッとした表情をしたが既に遅かった。その場で倒れてしまった。

「さてと」

地面にモンスターボールを5つ置いた。

「ごめんね、エーフィ」
「フィ?」
「……ここで待ってて?」

ミズカの言葉に、エーフィは首を横に振る。エーフィには、合図をしたら催眠術をするように言っておいた。エーフィはミズカと戦う気だったのだが、ミズカは違った。心の中で謝りながら、エーフィをモンスターボールに戻してしまった。

「皆……、ありがとう」

ミズカは、深呼吸をすると、闇に包まれ森の奥へ進んで行った。

最初に目を覚ましたのはピチューだった。焦りながらも、ミズカが置いて行ったモンスターボールから、勝手にエーフィを出す。

エーフィはモンスターボールから出されるやいなや、ピチューにミズカを追いかけると告げ、急いで追い掛けて行った。ピチューはミズカを追い掛けず、まずはサトシ達を起こす。

サトシ達はハッとした表情で起きた。ミズカの姿はない。サトシがピチューを見るとピチューは頷く。サトシ達は血の気が引いていくのがわかった。彼女は恐らく、自分の父に会いに行ったのだ。

「ミズカ……!」

いても立ってもいられず、サトシは走り出した。ヒカリとタケシ、シゲルも後を追い掛ける。どこにミズカがいるかわからないが、その場にいては見つかるはずがない。

この暗さだと、ムクバードでミズカを探すのは困難だ。ピチューはミズカの匂いを探り始めた。サトシ達はそれについて行った。

「お父さん……」
「やはり仲間は大事だよな。わざわざ来るとは……」

サトシ達が目を覚ます少し前。ノリタカは見透かしたようにミズカを一瞥した。ノリタカはすぐに見つかった。

生きるために立ち向かう。その覚悟は決めたが、仲間を巻き込むなんて、ミズカにはやはり出来なかった。

「仲間は巻き込みたくない。でも、殺されるつもりもないよ」

静かに言う。沈黙が二人を包む。

「コダック」

ノリタカのモンスターボールからコダックが出てきた。

「お父さん、聞いて? あたしがお父さんにとって望んで生まれてきた存在じゃないってことはわかってる」
「サイコキネシスだ」

容赦なくノリタカはミズカを攻撃した。サイコキネシスで体を締め付けられる。

「でも……、あたしは今生きてる……。……サトシだって、これ以上傷つけたくない……! だから、考え直してよ」
「吹っ飛ばせ」

サイコキネシスを喰らいながら、懸命に訴えるミズカ。ノリタカの表情は月明かりの逆光で見えない。ミズカは吹っ飛ばされると、大木に背中を打った。

その後もミズカはコダックからハイドロポンプを受けたり、サイコキネシスで何度も叩きつけられたりした。
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