30章 戦慄の戦い

「君が……」
「あたしが?」

いまだに躊躇うシゲルにミズカは首を傾げる。

少しの間。その間がすごく長く感じる。シゲルはミズカをまっすぐに見たと思うと、決心したように大真面目に口を開いた。

「君が……、好きだからだよ」

響いてきた言葉にミズカは耳を疑った。いきなりなことで、ミズカは混乱した。

「……え? ちょっ……、え?」

顔が赤くなり身体が熱くなった。一瞬、自分の勘違いで友達としてなのかと思ったが、少し暗いながらもシゲルの顔が赤く見えた。

ミズカは目を見開く。こんな照れたようなシゲルの顔は初めて見る。心臓がドクドクと脈打った。やっとのことで、今言われたことを飲み込む。

「あの……、なんといいますか……。それは……、こ、告白ですか?」
「すまない。迷惑だったかい?」

わけがわからなくなり、敬語を使うミズカに、シゲルは少し慌てた様子で彼女に聞いた。迷惑なんてとんでもない。ミズカはもげそうなくらいに首をブンブン横に振る。

そして、胸を抑えた。ちゃんと自分の気持ちも伝えなくては……、と。

「……あたしも。シゲルが……、好きだから」

言った後で、物凄く恥ずかしくなった。エーフィを見ると、目を逸らされる。助けを求めるなと言いたいのだろう。

人に想いを伝えることが、どんなに大変なことなのか。ミズカは生まれてはじめて経験した。両想いとわかったのに、心臓が締め付けられるようにギュッとなる。

「……本当かい?」

シゲルに聞かれ、コクッと頷く。余計恥ずかしくなったが、お互い顔を合わせ静かに笑った。やっと少し落ち着き、ホッとする。

想っていてくれたことに、ミズカは少し泣きそうな気持ちになっていた。が、視線を感じる。ミズカとシゲル、それにエーフィは呆れた。

「エーフィ、呼んできて!」

ミズカはムッとしながら、人影が見える木々を指した。エーフィは頷くと、木々に隠れている三人と二匹を呼ぶ。サトシ、ヒカリ、タケシ、そして、ピチューとピカチュウが隠れていたのだ。ヒカリとタケシ、ピチューとピカチュウは苦笑、サトシは何だかわからずキョトンとしている。

「やっぱり……」

ため息混じりにミズカは3人を見た。

「すまん。いや、通りかかってな……」
「大丈夫、大丈夫! 告白なんて聞いてないから」
「聞いてんじゃん! 何が大丈夫なの!?」

タケシとヒカリの言葉に、ミズカは頭を抱える。今のを見られていたと思うと、とても恥ずかしい。

怒りながらもミズカは心のなかでは苦笑していた。シゲルと両想いだった。だったら、生きなきゃいけない理由が増えた、と。

「村に着いたらカスミに連絡したらどうだ?」

不意のタケシの言葉。カスミに連絡できれば盛りあがるだろうな、と思った。けれど、今はそれどころではない。ミズカは少し暗い表情になった。

「まさか、まだ父さんの言ってたこと……、考えてるのか?」

話が掴めたサトシが聞く。ミズカは目を逸らした。5歩ほど、彼らから離れた。
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