30章 戦慄の戦い

「さて、行くかい? 散歩に」

片付け終わり、シゲルに声をかけられた。ミズカは硬直した。そして、頬を赤らめる。夜で良かったとミズカは思った。

「う、うん……」

曖昧な返事をし、何故かエーフィの所に駆け寄る。

「エーフィ、ヘルプ!」

ミズカは小声でエーフィに助けを求めた。ミズカはエーフィを拝む。

さすがに、二人きりと言うのは身がもたない。前にエーフィが盗まれた時にオーキド研究所でも二人きりだったが、頭がそれどころではなかった。

しかし今回は、最後かもしれない。だから、嬉しい。反面、少し決意が気持ちが揺らぐ気もした。それにミズカはエーフィに他のことをお願いするつもりだ。

「……エーフィ、いい?」

その目的についてエーフィに話すと彼女は、了承してくれた。ミズカは、自分のポケモン達をモンスターボールに戻す。

「さて、行こっか」

ミズカはニコッと笑い、シゲル、エーフィと一緒に夜の道を散歩する事にした。ミズカは今はシゲルの隣を楽しむことにした。

こうやって、シゲルと一緒に散歩ができるなんて、少し前までは考えてもみなかった。

「自分の父に会いに行くつもりだったみたいだね」
「やっぱり、バレてた? 皆もわかってるよね……」

シゲルが話を振る。ミズカは苦笑した。

「あぁ。僕が一緒に行くと言ってなかったら、皆、止めていただろうし」
「だよね……」

ため息をついた。そして、急に立ち止まる。シゲルは彼女の行動に首を傾げる。

ミズカは少し迷っていた。今日が最後なら、気持ちは伝えたい。エーフィはミズカの気持ちがわかったのか。少し微笑んだ。

少し前までは、告白なんてしようとも思わなかった。何故なら、嫌われていると思っていたから。最初はともかくとして、シゲルの言動から今はそうでないことをミズカも感じている。

とはいえ、変な話だ。ミズカみたいに何度もアニメで見ているわけでもなければ、会ったのも数回。それに、自分はサトシから父親を奪い、傷つけた張本人だ。そんな自分をなぜ?

告白する勇気が出ない分、無駄なところに頭が回る。

「シゲルは……、なんであたしを助けてくれるの?」

恐る恐る聞いてみた。なぜ助けてくれるだろうか。サトシの友達なら尚更、自分を助けないだろう。そもそもシゲルが気にしていなくても、果たしてオーキド博士が許すだろうか。孫に危ない橋を渡らせるだろうか。

間違いなく、ここにいるのは本人の意志だ。

「それは……」

シゲルは目を逸らす。ミズカは何故答えるのに躊躇うのか、疑問に思った。
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